「なんだか最近物忘れがひどくなってきたんじゃないかな〜」
「もしかして認知症かも?」 などという事はなかなか人には相談しにくい事です。
そんな悩みの相談を受けるために平成10年10月に福岡大学病院神経内科に設立されたのが「ものわすれ外来」です。17年度患者内訳

「物忘れ」とは”読んで字のごとし”ある出来事や人の名前、場所など記憶していた事を忘れてしまうことです。
では、最近よく耳にするようになった「認知症」とは何でしょう?
「認知症」とは、成人した後に脳の神経細胞に何らかの障害や変性が起こる事によって生じる知能障害による症状の事です。
知能とは、外部からの様々な情報を記憶したり、判断し たりする能力の事ですが、この能力が低下、あるいは欠如する事で日常生活に支障をきたす様になり、いわゆる「認知症」と呼ばれる状態となる訳です.
「認知症」にも種類があります
認知症にも症状によっていくつかの種類に分けられます.ここで代表的なものについて説明します.
■ アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多いのがこの症状です.65歳以前に発症する進行性の認知症を指していましたが65歳以前に発症する老年認知症も病理学的に同じ様な病変を示すため,両方を総称してアルツハイマー(型)認知症と呼んでいます.この症状は発症の時期がはっきりせず,徐々に記憶力,記銘力が低下つまり"物忘れ"がひどくなり判断力・見当識の低下へと進行していきます.
■脳血管性認知症
脳の血管障害によって起こる症状です.脳出血,脳梗塞,脳動脈硬化などにより脳の神経細胞に障害が起こり,その為に生じる症状です.一過性の神経症状や運動,知覚障害などを伴う場合に多くみられます.血管障害の程度によって,認知症の程度も異なります.
本来の認知症とは異なる認知症
■仮性認知症
老人の方が、気持ちの沈みがちな”うつ状態”にある場合中にはものわすれがひどくなったり,場所が分からなくなったりと"認知症かな?"と思われる症状を示すことがあります.この場合抗うつ剤などの治療で症状は消失しますが,真の認知症との鑑別が難しい事があります.
■治療可能な認知症
今のところ認知症を治す事はできないといわれていますが,慢性硬膜下血腫,甲状腺機能低下症,
正常圧水頭症などによる認知症は原因疾患の治療などによって治る可能性があります.
比較的短期間に認知症症状が出現するような場合は,特に疾患の鑑別が重要です.
認知症ってどうやって決まるのか?? 認知症について一通りのご説明をさせていただきましたが、では,どうやって認知症と判断されてしまうのでしょうか?

現在日本で告知されたくない疾患の第一位は癌ですが,欧米ではアルツハイマー病だという事実を皆さんはご存じでしょうか?
日本には「ボケとバカは苦労がない」「ボケるが勝ち」などという言葉がありますが,これらはなんとも勝手な言葉であります
。
欧米ではアルツハイマー病であるという告知は自己の個性,自我がなくなることを意味し最もつらい宣告であると考えられています(ちなみに,癌は十番目くらいだそうです)。アルツハイマー病の患者さんが多いという事は医療経済的にも大きな損失であることから世界中の多くの基礎臨床の研究者がこの疾患に取り組んでおります。
しかしながら,なお根本的な治療薬の開発にはもう少し時間がかかりそうです。 アルツハイマー病は老年期の進行性認知症です。 全世界で千五百万人がこの病気であるといわれ,女性が男性の二倍もの多さであるという特徴があります。
初期の頃は少し前の事をすっかり忘れてしまう「近時記憶」の障害が起こり,十年位の経過で次第に知能障害が進行し,人格崩壊がもたらされ,最終的には寝たきりとなってしまいます。
残念ながら未だに原因は解りませんし,根本的治療法がありませんので患者さんはもちろん,ご家族も精神的,肉体的,財政的な種々の問題に直面し,戦いを余儀なくされているのが現状です。
どのような病気でもそうでしょうが,認知症においても早期診断が極めて重要であります。
患者さん一人一人のおかれている状況により,在宅介護か施設介護かは異なってきますが在宅や地域全体で患者さんを介護していくというのは一つの大事な考え方であると思われます。
早期診断によって早くから医療上,経済上あるいは民法上の問題など,やがて訪れる事態に備える時間的余裕ができ,長期にわたるケア・プランを立てることで安心して在宅療養が可能になると考えられます。
しかしながら,実際には何年も経ってからいよいよ介護困難になって受診される患者さんが多いというのが実際の状態です。
この状態では患者さんが施設入所となってしまいます。
その事が本当に家族の満足した生き方なのか,それぞれの立場で問いかける必要があります。なぜ,早期診断にいたらないのか,その理由は三つあります。
第一に, はなれた環境の中では認知症症状が見つかりにくいという点です.新しい課題が与えられる様な環境ではおかしいと判断できますが,慣れた環境では難なく生活できる能力は保持されているからです.また,患者さん自身が,主症状である記憶障害をなんとかごまかそうとする戦略で行動するからです.
第二はご家族の方がこの程度のボケは年寄りであれば誰にでもあることだと考えている場合が多く,病院を受診しないということです.第三はご家族が認知症老人はみっともないから隠そうという行動にでる場合があるという事です.
外来担当医 山田 達夫
(福岡大学病院 神経内科・健康管理科教授)
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