
パーキンソン病とはなんでしょうか?恐い病気なのでしょうか?また何が原因なのでしょうか?パーキンソン病と老化現象とは違うのですか?
このような疑問が常に神経内科外来で患者さんやご家族から聞かれます。通常50歳以降に発病する病気ですが、日本全国で12万人の患者さんがいて、特に65歳以上の0.5-1%がパーキンソン病であるという事実は、この病気が決してまれなものではないことがわかります。
パーキンソン病が始まるときにこれは「年のせいかな」と思うことがよくあります。手のふるえであったり、動作が鈍くなったり、歩行が小幅でゆっくりになったりで、個々で症状の始まりが異なります。しかし単なる老化とは異なり、脳の中のドーパミンが減っているために振戦、動作緩慢、歩行の異常が出現します。パーキンソン病の治療は神経疾患のなかで飛びぬけて進歩しており、この疾患はしっかりと専門医が診断して、適切な治療を行えば生活能力は格段に向上し、その寿命も一般の平均寿命に限りなく近づいてきています。

■病気の始まりは片方の手のふるえが最も多く、何もしていない手が自然にふるえているすなわち「安静時」にみられるのが特徴です(安静時振戦)。手足を動かすとふるえは軽くなります。
■安静時振戦に加えて、同時に腕の運動のぎこちなさや、素早い運動ができなくなります(寡動)。筋肉がこわばって硬くなり(固縮)、女性であればキャベツの千切りがしにくくなるあるいは字を書くスピードが遅くなり、文字を書いているうちに字がだんだん小さくなってくることもあります(小字症)。
■顔の表情が乏しくなり、喜怒哀楽がわかりずらくなります(仮面様顔貌)。大きい声でなくなり、小さく単調になります。起き上がり、椅子からの立ち上がりなどの動作もゆっくりになり時間がかかります。歩く時に以前よりスピードが遅くなります。歩幅が小刻みになり、歩き出そうと思っても始めの第一歩が踏み出しにくくなることがあります(すくみ足)。
■瞬きが少なくなり、声も出にくく小さくなります。
■これまでの症状はとても困りますが、自分の生活はゆっくり行えば自立しています。パーキンソン病の方が本当に困るのは歩行障害でしょう。最初は前かがみの姿勢で歩くようになり、手の振りが減ります。歩幅は小刻みとなり、すり足になります。靴の前のほう減りやすくなります。今まで一緒に歩いていた人についていけなくなったりします。小刻みな歩き方をしている途中に足が止まらなくなり何かにつかまって止まることもあります(突進現象)。また後方に転倒しやすくなるのも特徴です(後方突進現象)。

■パーキンソン病と診断されたら・・・
治療開始のタイミング
神経内科の専門の病院にいかれて、パーキンソン病か否かの診断を受けることが大事です。パーキンソン症状を引き起こす薬を服用していないか?脳梗塞などの合併がないか?他のパーキンソン症状をきたす病気ではないか?などの鑑別を行い、診断がついたら生活指導と抗パーキンソン病薬による治療が適応となります。パーキンソン病は脳内のドーパミンの量が減っていますので、ドーパミンを補う治療が中心です。
レボドパはそのドーパミンを効率よく補う最良の薬です。実際にレボドパ治療を始めるとパーキンソン病患者の症状は劇的に改善します。しばらくはよいのですが、数年たつとレボドパの効果は徐々に減弱し、時間も短縮します。症状の変動が出現します(ウェアリング・オフ現象)。ときによっては1日の何割かの時間はほとんど動くことができないむなしい時間をすごすことになります。また体が勝手に動いてしまう不随意運動(ジスキネジア)が出現することもあります。
パーキンソン病の治療効果長引かせるため
ではなぜこのような効果の減弱や、ジスキネジアのような問題が起きてくるのでしょうか?パーキンソン病はその経過中は治療経過中数ヶ月単位ではあまり変化がみられませんが、潜在的には刻々と変化が起こっているようです。パーキンソン病の主病変である「黒質」も変性が進む一方で、レボドパ治療をおこなってもそれを利用する黒質が疲弊してくるわけです。
このような事実から、初期のパーキンソン病治療の考え方が変化しています。レボドパ主体の治療からドーパミンアゴニストを絡めた治療はレボドパの長期副作用である効果の減弱や、ジスキネジアに対してよい結果を見せています。またMAO-B阻害薬やアマンタジン、抗コリン薬などを併用する場合があります。
一部のパーキンソン病、特にレボドパやドーパミンアゴニストで効果が不十分で、症状の変動やジスキネジアの強い場合にパーキンソン病の外科的治療すなわち深部脳刺激をおこなうと症状がよくなり、薬の量が減らせる場合もあります。
パーキンソン病における固縮は筋肉を硬くし、腰痛や肩の痛みを引き起こしやすいので、毎日の散歩に加えてストレッチ(柔軟体操)を毎日続けることが長持ちのコツです。それ以外にも仕事や趣味を持って生き生き毎日を過ごしたほうがそうでない場合よりも症状の進みが遅くなります。
■パーキンソン病の悩ましい全身症状を解決する
うつもパーキンソン病の症状?
抑うつ症状といって、精神のエネルギーが減少し、何事にも興味が持てず、自分は役に立たない人間であると日々を沈んだ気持ちで過ごしてしまう「うつ」はパーキンソン病患者さんに多く見られます。これは脳内に「うつ」の原因ともなるドーパミン、セロトニンの減少を認めることが原因です。「うつ」の症状は治療可能ですので恥ずかしがらずに医師に相談してください。治療は、MAO阻害薬やドーパミン作動薬あるいはセロトニン選択性再取り込み阻害薬が有効です。体に動きが鈍くても心は健康に過ごさなければなりません。
睡眠障害(むずむず脚症候群を含む)も合併しやすい?
パーキンソン病患者の睡眠障害は一般高齢者よりも頻度が高いことがわかっています。特に夜間に2〜3回目がさめることが多く、早朝に眼が覚めてしまうこともしばしばです。また入眠時に脚がむずむずして眠れない「むずむず脚症候群」は最近注目されている睡眠障害の原因であり、パーキンソン病患者さんに多いといわれています。もうひとつはレム睡眠行動異常症ですが、夜に夢を見るときに大きな声を上げたり体を激しく動かしたりするのが特徴です。睡眠障害は昼間の覚醒を強く障害することが知られています。睡眠は日中の活動に影響を与え、また日中に活動的であれば睡眠はより深くなります。このようなことから生活指導が必要な場合があります。
パーキンソン病は消化器の病気?
パーキンソン病の多くの患者さんは実は便秘に苦しんでいます。またドーパミンの治療は便秘を悪化させますが一方で、緩下剤や通常使用する下剤でうまく管理できない場合があります。この消化管機能障害は抗パーキンソン病薬の吸収を阻害し、いわゆる長期副作用の原因にもなりうるのです。
パーキンソン病の進行が進むと栄養状態に変化が生じます。体重は一般的に減少し、血液中のコレステロールをはじめとした栄養素が減少してきます。これは結果として脳内神経伝達物質の産生を低下させ、パーキンソン病のコントロールを悪化させる要因になりうると思われます。消化器活動を健全化し、栄養状態を良好に保つことはパーキンソン病の治療にとってと手に大切なことです。
これまでのパーキンソン病治療は運動障害の改善を目的とした治療のみに注目が集まり、それ以外の症状に対する評価と治療が十分ではありませんでした。この全身症状はレボドパ治療の効果を弱める場合があり、その一部は深刻な問題を招くこともあります。
私どもはこれらの問題に正しい評価と治療が必要と考え、特殊外来(パーキンソン外来)を設けています。
パーキンソン病に関しての正確な情報を発信し、当科において教育普及活動を行うとともに、看護師、理学、作業療法士、栄養士など多様な職種の人間の相互の協力により、パーキンソン病の知識を高めていくことが必要と考えています。