最近の研究活動
最近の研究紹介
当科では、糖尿病や内分泌疾患多数例における臨床疫学研究や日常臨床で遭遇した稀少疾患や難病の病因解析を分子レベルで行っていく症例指向型研究を大切にしています。同時に、将来の臨床応用をめざして、臨床への橋渡し研究となるような実験研究も行っています。 臨床、基礎研究のいくつかをご紹介いたします。
1.メタボ、糖尿病の基礎研究
最近、糖尿病患者に癌の発症が多いことが知られるようになり、インスリン抵抗性を介した高インスリン血症や高IGF-1血症の影響がそのメカニズムとして注目されています。一方、ビグアナイド薬やチアゾリジン誘導体はある種の癌に対して抗癌作用を有することも判明してきています。私達は、インクレチン製剤に着目し、GLP-1アナログのExtendin-4が前立腺癌増殖抑制作用を有することを見出し、最近、報告しました(Diabetes 63: 3891-905, 2014)。現在、様々な担癌モデル系においてインクレチンの抗癌作用とそのメカニズムを検討中です。またインクレチン製剤の抗動脈硬化作用とそのメカニズムに関する研究も進行中です(Cardiovasc Diabetol 13:154-161, 2014)。
ヒトは加齢とともに何故、メタボになり、糖尿病を発症してくるのかということを、加齢とともに漸減低下する性ステロイド、特にアンドロゲン作用系の観点から研究を行っています。現時点の成果として内因性のアンドロゲン-アンドロゲン受容体(AR)系の活性化は、一部にはレプチン-STAT3シグナルの活性化を介して、エネルギー産生亢進の方向に作用して抗メタボ作用、抗糖尿病作用を有する可能性を示唆する成績 (Diabetes 54:1000-108, 2005; J Steroid Biochem Molec Biol 109: 254-257, 2008; Endocrinology 149: 6028-36, 2008)を得ています。事実、血中総テストステロン値は、メタボ男性では非メタボ男性に較べて明らかに低値であることを明らかにしています(Endocrine J 2015 in press)。
また、内因性のアンドロゲン-AR作用系は、酸化LDL受容体のLOX-1の抑制を介して初期あるいは進行動脈硬化相において、抗動脈硬化性に作用していることもわかりました(Endocrinology 151:3307-16 2010, Endocrinology 53: 3405-15, 2012)。興味深いことにインスリン/IGF-1シグナルはFOXO1を介してARを活性化する作用があることを見出しており (J Biol Chem 282:7329-38, 2007)、インスリン抵抗性病態とARの関連も示唆されます。これらの成果をヒントに、抗メタボ作用が期待できるような選択的アンドロゲン受容体剤(SARMと言います)の探索を行ったところ、あるテストステロン誘導体S42に顕著な中性脂肪低下作用があることを見出し(Endocrinology150: 5606-16, 2009)、現在、生活習慣病を標的とした創薬を夢見て研究を続けています。詳しくは、添付の日本語総説(PDF-1)を参照いただければ幸いです。
2.メタボ、糖尿病の臨床研究
私達の科では、城南区を中心とする近隣医療機関の先生方との間でF-WINDと称する生活習慣病勉強会を立ち上げており、筑紫地区の臨床研究ネットワーク(Chikushi-JNR)と連動してDPP4阻害薬を中心とした糖尿病治療に関する臨床研究が進行中です。1000例以上の症例登録によるデータベースの解析を通じて糖尿病薬剤の治療効果を検証する研究を行っています。その最初の成果として、DPP-4阻害薬の臨床効果は相対的にHbA1c値が高く、BMIの低いヒトほど発揮されやすいことを我が国で最初に報告しました(DRCP 95: e27-28, 2012)。また、前向き研究で、DPP-4製剤の薬効に関する様々な臨床研究を展開中です。その他、糖尿病患者さんの合併症発症・進展と遺伝子環境修飾(エピゲノム制御)の関係、前立腺癌をモデルにした糖尿病治療薬による癌制御に関して、基礎、臨床の観点から研究を展開中です。
3.間葉系幹細胞を用いたステロイド産生細胞再生とそのメカニズムの研究
副腎、性腺の発生分化には不可欠の転写因子SF-1(Ad4BPとも呼ぶ)を骨髄由来あるいは脂肪由来の間葉系幹細胞にアデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入することにより、ほとんどすべてのステロイドを産生する細胞に転換し得ることを世界で最初に報告しました(Genes Cells 9: 1239-47, 2004; Endocrine J 53:449-459, 2006; J Mol Endocrinol 39: 343-350, 2007; BBRC 369: 862-867, 2008; Endocrinology 149: 4717-25, 2008)。現在は、マイクロアレイ解析を用いて、そのメカ二ズムの詳細を検討していると同時に、間葉系幹細胞を用いた多臓器における再生医療への応用研究を摸索しています。詳しくは、添付の日本語総説(PDF-2)を参照いただければ幸いです。

>> 日本語総説(PDF-1)はこちら
>> 日本語総説(PDF-2)はこちら
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