教育の概略
医学部での教育が、医学生にとってどの程度実感しながら学べるものなのか?医学生の過去の体験から、出来るだけ自分史を呼び起こして教育に活かそうと考えていますが、それだけでは限界がありますから、講義と実習を通じて、「参加型」、「体験型」をキ−ワ−ズにやり方を工夫することを試みております。講義のそれぞれ一週間前に「講義事前ゼミ」を開講し、10人ずつ順番に学生と話し合いの場を持っています。この事前ゼミを通じて、学生の問題意識を高め、また実際の講義もこの10人と協力して組み立て、医学生の「参加」を促すと同時に、実際に妊産婦や医療、福祉関係者等に話を聞くなどの体験をこの事前ゼミに組み入れ、「体験」が教育に活かされるように考えております。実習は、保健所などの施設実習と、テ−マを決めて学生が自分たちで組み立てるテ−マ実習とがありますが、どちらにしても実際に自分たちで、見、聞き、触れ、そして現場で働く人、住民と直接会って交流する「体験」重視で行っています。将来どの分野で働くにせよ、基本的な知識、技術、態度、感性、倫理をバランスよく身につけた人材を育てるために、この体験型の実習はとても大切なものだと感じています。
開発中の教科書; 参加的に学ぶ公衆衛生学(pdfファイル)
2000年度の教育
講義概要と班分け 2000年、M3社会医学総論(守山・福島担当分)
|
月日 |
講師 |
項目 |
主題 |
キーワード |
取材と思考の課題 |
|
4/05 |
守山・福島 |
導入1 |
社会医学の学び方、社会医学を参加/対話的に学ぶことの意味、自分と友人の経験から学べることの概略 |
教科書の説明、キーワードの解説、講義概略の説明、 相互学習用個人資源表の配布・説明・記入、グループ分け、予備討論
|
自分の体験や友人の体験は、どのように整理したら、そこから学ぶための知識が得られるだろうか? |
|
4/12 |
福島・守山 |
導入2 |
対話と参加から学ぶ社会医学の第一歩、学ぶべき主なキーワード |
相互学習用資源集の活用、グループ分け、グループ別の課題討論。 対話と質問の仕方、事例的な答えの整理、生の意見をそのまま活かした形の講義資料法。 クラスの中と外とでの取材の進め方。 |
自分たちのグループに合った主題はどれだろうか。 取材時は、誰からどのような話を聞いたら良いだろうか? 聞いた話をそのまま活かして講義資料とするには、どうすれば良いだろうか。 お互いに取材し合い、さらに取材の輪を外に広げるにはどうするか? |
|
4/19 |
守山 |
|
健康とは何か? 健康についての考えはどのように出来上がってきたか? 日常生活で大切なことを基礎として健康を考える(Wify; what is important for you?) 人口とは何か? |
健康の定義、目標としての健康、アルマアタ宣言、オタワ宣言、 人のまとまり・集合としての人口、人口現象、母集団、出生、死亡、移動、生命表。 |
人にとって“健康”とは、何だろうか? 出来るだけ多くの人に「健康とはどのようなことだと思うか」、またその逆に「不健康とはどのようなことだと思うか」を聞いてくる。またそのような考えに立って、健康が現在良い状態なのか、悪い状態なのかの評価を考える。 |
|
4/26 |
福島 |
環境保健概論 |
環境とは何か? 環境問題とは何か? 健康と生活環境との関連をとらえる |
環境の概念、環境と健康、生態系と人間、生物濃縮、日本経済と公害、環境問題、大気汚染、 水質汚濁、土壌汚染、地球温暖化、酸性雨、砂漠化、オゾン層破壊、社会医学の教訓、既存環境モデルの限界、リサイクル社会 (屋内環境の管理、住宅問題と都市計画、鼠族・昆虫の害と防除、衣服環境、衣服気候、衣服による障害) |
その人にとって特に気になる環境問題とは何だろうか? 出来るだけ多くの人に聞いてみよう。 そのような環境問題の原因は何だろうか? 我々の毎日の生活は、そのような環境問題と無関係だろうか、それとも何か関連しているだろうか。 |
|
5/10 |
福島 |
環境保健1 |
健康行動を支援するという視点から環境をとらえる。 |
健康観、健康至上主義、健康行動、ヘルスプロモ−ションと健康支援環境 |
「あなたは今、健康だろうか。あなたより、もっと健康な人がいるとすればどんな人だろうか。」また、「あなたにくらべて、健康ではない人というと、どのような人を思い浮かべるだろうか。」 この質問を色々な人にして、人は“健康と病気”、“正常と異常”、“障害者と健常者”をどのように区別しているか、その区別をどう思っているか、を考える。 |
|
5/17 |
守山 |
環境保健概論2 |
身の回りの環境を考える。環境として何が大切か? ある環境を取り出し、それを計測することを学ぶ。原則を学んだら応用してみる。 |
環境の概念2,身近な環境の計測、刺激−反応系としての人間、環境を計測することの意味、環境を計測するときの考え方、 環境と記憶、環境と感覚、環境とバリア、バリアフリーと環境、環境としての対人関係、 環境/人間行動/リスクの相互関連 |
その人にとって大切な環境とは何だろうか。出来るだけ多くの人に「(身近な毎日を考えたとき、その人にとって)大切な環境とは何か」を聞いて整理する。またその「大切な環境」は、現在良い状態なのか、悪い状態なのか、変化しているのか、等を考える。 |
|
月日 |
講師 |
項目 |
主題 |
キーワード |
取材と思考の課題 |
|
5/24 |
福島 |
環境保健2 |
「参加型・問題解決型環境保健」、「リスクアセスメント・マネ-ジメントの考え方(実質安全量はどのようにして決められたか?)」、「有害物質を取り扱う工場周辺住民の知る権利と参加の意味」 |
参加型・問題解決型環境保健、有害物質の吸収と排泄、水質汚濁の指標、環境アセスメント、リスクアセスメント、リスクマネ-ジメント、住民の知る権利と参加 (環境モニタリング、公害健康被害補償制度、環境基準と排出規制、汚水処理、水質基準、浄水法と消毒、水系伝染病) |
毎日の生活や身の回りを考えたとき、有害かもしれないと心配するような物質や刺激、汚染にはどのようなものがあるだろうか。またその実際の有害さや健康への影響について、我々はどの程度まで、知らされているだろうか。いろいろな人に話を聞いてまとめてみよう。 |
|
5/31 |
守山 |
疫学的発想1 |
流行と因果関係から出発して、記述疫学と疫学の仮説に関し、基本を理解する。 |
流行、流行の原因、時代と流行、罹患の考え方、有病の考え方 個人とリスクの関係、前後関係、原因と結果、原因となり得るもの、ライフスタイルと疾病、 因果関係、因果関係の立証 |
いろいろな人に話を聞いて、“流行”とは何かを考える。疾病だけでなく、社会的な出来事にも範囲を広げて考える。その人にとって、これまで印象深い“流行”とはどのようなものか。また“流行”の原因や、その後、“流行”はどうなって行ったかについても、考える。 |
|
6/07 |
守山 |
疫学的発想2 |
様々な集団を例に、疫学の考え方、疫学の代表的な研究方法の基本を理解する。 |
コホート研究、患者対照研究、スクリーニングの考え方、予防とスクリーニング、カットオフポイント、ランダム化、偽陽性、偽陰性、寄与危険度、相対危険度 |
これまで自分が経験したことのあるいろいろな集団を考える。(例えば、幼稚園時代、私は幼稚園児という集団に属していた。病気で通院したときは、患者という集団に属していた。受験のときは受験生という集団にいた。海外に出たときは、自分がそれまで日本人という集団に属していたと感じた。…) その時のその集団を、何かの特徴で幾つかに分けてみる。その集団はその後、時間が立つにつれて、どうなって行ったろうか。その集団は、まだあるのだろうか、それとも解体してしまっているだろうか。自分の体験による整理が終わったら、友人や、さらに多くの人に聞いてみる。 |
|
7/19 |
守山 |
事例研究 |
ライフサイクルの視点から、人の一生と健康との関連の概要を理解する。事例研究の基本的な方法を学ぶ。 |
ライフサイクルと健康の問題、母子保健/学校保健/地域保健/職域保健/高齢者保健の各概略理解。 量的研究と質的研究、構造化された質問方法と構造化されない質問方法、 |
いろいろな年齢の人に話を聞いて、その人にとってストレスとなっているのは何か、何を大切にして生きているか、を考える。その人の年齢とストレスの内容、大切なことなどには、何か関連があるだろうか。 |
|
10/13 |
守山、福島 |
まとめ |
夏休み中の事例研究総括。医療に従事する様々な人の物の見方考え方、それを支える社会システムの概要を理解する。 |
|
|
講義概要と班分け 2000年、M4衛生学公衆衛生学(守山・福島担当分)
|
月日 |
講師 |
項目 |
主題 |
キーワードの課題 |
取材の課題 |
|
5・10 |
守山・福島 |
導入1 |
衛生学公衆衛生学の学び方、参加/対話的に学ぶことの意味、自分と友人の経験から学べることの概略 |
出席表の書き方の説明、 教科書の説明、講義概略の説明、 キーワードの課題説明 取材の課題説明 グループ分け、予備討論 |
公衆衛生学とは何だろうか? 社会と共に動くこの複雑な対象を、興味深く学ぶには、どうしたら良いだろうか? |
|
5・ 24 /1 |
福島・守山 |
導入2 |
対話と参加から学ぶ衛生学公衆衛生学の第一歩、キーワードの課題から学ぶ、取材の課題から学ぶ |
Wify;what is important for you? WIFYを用いた相互交流と学習のネットワーク作り事始め、班別の発表形式に関する演習 |
公衆衛生学は、自分について知り、他者について知ることが、すべての学習の出発点となる。 この“人を通して学ぶ”という感覚を、WIFYを通して身につけてみよう。 |
|
5・ 24 /2 |
守山 |
医療と社会1 |
医師とは何か、患者とは何か、 病気の社会的な意味
|
患者の権利、患者の自己決定権、ヒポクラテスの誓い、ジュネーブ宣言、リスボン宣言、インフォームドコンセント |
人にとって“病気”とは何だろうか? あなたは、どのような“病気”の体験をしているだろうか。あなたの友人や知人はどうだろうか。何人かの人に「病気になったときの体験」を聞く。病気になることで、人の物の見方、考え方に何が起こるだろうか。そのとき、医師や看護婦の存在、家族の存在などはどのように感じられるだろうか。また病気から回復するときは、どのように感じられるだろうか? |
|
5・ 31 /1 |
守山 |
医療と社会2 |
社会の中における障害と医療の実際、 障害の理解、 障害を乗り越えるには? |
障害の概念と構造、QOL(quality of life)、リハビリテーション、バリアフリー、ノーマライゼーション、ユニバーサルデザイン |
簡単に出来たはずのことが突然に出来なくなる、何かを感じられなくなる、物が見えにくい、聞こえにくい、など、さまざまな“障害”について考えてみる。あなたはそのような経験がないだろうか。あなたの周囲の人にも聞いてみる。障害を持つ人の立場に立って物を考えられると、いろいろなことが新たに見え始めるであろう。他の人の持つ障害につき、その意味を学んだり、その障害を自分も体験することは、どこまで可能だろうか。考えてみる。 |
|
5・ 31 /2 |
福島 |
産業保健1 |
産業中毒とは何か 産業中毒はなぜ発生するのか 産業中毒と環境問題との共通点と関連性 |
産業中毒、有機溶剤中毒、農薬中毒、金属中毒、ガス中毒、生物学的モニタ リング、許容濃度による管理の限界 |
食中毒や、ペンキを塗ったり農薬によって気分が悪くなったり不安になったりした経験はないだろうか?自分の生活を見回してみて、健康に影響を与えそうなものが身近にどれくらいあるだろうか?友人や近所、親戚その他で有機溶剤、農薬、金属、ガスなどの健康への影響について話してくれそうな人に出来るだけじっくり話を聞いてくる、あるいはその現場をじっくり観察してみて、なぜ産業中毒が発生し続けるのかを考えてみる。 |
|
6・ 7 /1 |
守山 |
医療と社会3 |
チーム医療とは何か、様々な医療の職種はなぜ存在し、どのような役割を担っているか、より良いコミュニケーションとは? |
チーム医療、医師とは、歯科医師とは、看護婦とは、理学/作業療法士とは、社会/介護福祉士とは、医行為、医業類似行為、業務独占、名称独占 |
昨年夏のレポートでは、医療に関連して、立場の違いを考えた。そこから出発して、医療に関わる様々な職種の意味を考える。あなたの周囲にいる様々な職種(医療に関連した)に話を聞いてみる。それぞれの職種で、現在、どのようなことが課題になっているだろうか。チーム医療に期待されていることは何だろうか。患者や他の職種とのコミュニケーションに関連して、どのような配慮がなされているだろうか。 |
|
6・ 7 /2 |
福島 |
産業保健2 |
職業癌とは何か リスクマネ−ジメントの実際 問題解決の視点
|
職業癌、暴露、医療従事者の職業癌、リスクマネ−ジメント |
私たちの身の回りに発癌性が予測されるものがどのくらい存在しているのだろうか?生活の中に実在する発癌物質について、私たちはどの程度の暴露なら安全、どの程度なら危険と区別しているのだろうか?自分自身の考えを他の人と比較して見る。医療従事者に職業癌の原因となる放射線被曝(Intervention radiology等)やウイルス感染の実態について話してくれそうな人に出来るだけじっくり話を聞き、その対策がどのように行われているか、あるいは行われなくてはならないか考えてみる。 |
|
6・ 14 /1 |
福島 |
産業保健3 |
今日の産業保健の特徴と産業医の視点 今日の産業保健で問題は何か、労働者を取り巻く環境の変化と産業保健 |
Work
related disease、労働災害、業務上疾病(職業病)、産業疲労、メンタルヘルス、ストレッサ-、ストレス、ストレスコ-ピング 今日の産業保健、産業保健の社会資源、産業医の視点と役割、国際化、高齢化、労働力の流動化(管理体制、健康管理、作業環境管理、作業管理、ト-タルヘルスプロモ-ションプラン) |
アルバイトや就職により、働いた経験はないだろうか?その仕事で働くことによって生じるあるいは増悪する健康問題が何か考えられなかっただろうか?友人や、両親、親族、隣人で今、職場で問題となっている健康問題について話してくれそうな人に出来るだけじっくり話を聞き、なぜそのような健康問題が今発生しているのか、背景を考察してみる。 |
|
6・ 21 /1 |
福島 |
コミュニティーヘルス |
コミュニティの視点から健康をとらえる、 コミュニティヘルスを支える社会資源、コミュニティヘルスにおける医師の役割、住民の役割 |
社会集団、コミュニティヘルス、保健・医療・福祉の総合化、医療圏と医師の役割、かかりつけ医 住民参加、高齢化社会、介護保険、ヘルシ−シティ |
自分達は今、どれだけのコミュニティ(共同生活の一定の地理的領域)、あるいはアソシエ−ション(特定の目的や関心をもとに組織された集合体)に所属しているだろうか?その所属集団の健康や生活に問題はないだろうか?あるいは何か今生活で困っていることや不安に感じていることはないだろうか?その所属集団に、困ったことや不安を相談する保健・医療・福祉のための社会資源はどのようなものがあるだろうか?様々な社会集団に属している人や、それに関わりのある保健・医療・福祉に携わっている人にも話を聞いてみる。 |
|
6・ 28 /1 |
守山 |
保健活動1 |
ライフステージの視点から保健活動をとらえる、新生児から高齢者までの人の一生において、どのような課題が現れてくるか? |
母子のニーズと母子保健活動、小児期のニーズと小児保健活動、思春期のニーズと思春期保健活動、壮年期のニーズと壮年期保健活動、老年期のニーズと老年期保健活動。 |
新生児のとき、幼稚園児のとき、中学生のとき、中年期、壮年期、老年期など異なったライフステージにおいて、人は健康に関連して、どのような課題をかかえ、援助を求めるだろうか。まず、あなた自身の場合から出発して考えてみよう。さらにあなたの家族や知人にも話を聞いて、考える幅を広げて行こう。特に女性は、妊娠/出産/育児を通して、男性とは異なる体験をするはずである。また男性の側も、それへの関わり方が問われている。また老年期の課題が、深刻なものになっている。話を聞いて、具体的に考えてみる。 |
|
7・ 5 /1 |
守山 |
保健活動2 |
社会の健康な発展という視点から保健活動をとらえる、安心して生まれ、暮らし、死ねる環境と社会を考える。 |
食に関する社会のニーズと食品保健、栄養に関する社会のニーズと公衆栄養、環境汚染に関する社会のニーズと環境保健、死者に関する社会のニーズと臓器移植、子供を産むことに関する社会のニーズと出生前診断、高齢者が増えることに関する社会のニーズと高齢者保健 |
我々と、我々の社会が健康で発展を続けるために、様々な課題/ニーズが問われている。食料は十分に必要だし、食品が安全なものであることは重要だ。環境も、健康で安心して暮らせるものでなければならない。次の世代に希望を託せるために、健康な子どもたちを育て、年老いたときは安心して死ねることも必要だ。このようなニーズについて、あなたの周囲の人に話を聞き、その人の立場からニーズをできるだけ具体的にとらえてみよう。ニーズを達成するためには、社会的なルールを決める必要があり、法律を作る必要も出てくる。周囲の人の意見を聞きながら、どんなルール、法律が必要かも考えてみる。 |
|
7・ 12 /1 |
守山 |
エビデンス |
健康や疾病に関連したエビデンスとは何か? エビデンスと保健活動との関連は? |
ヘルシンキ宣言、EBM(Evidence Based Medicine)、クリニカル・パス、死の定義の現状、病院の種類と機能、病床の利用状況、病院と医療スタッフ |
どちらを選ぶかを決めないと、行動が出来ない局面は、我々の生活にいろいろと存在する。健康に関連して、このような選択やその際の根拠(エビデンス)を考えてみよう。例えば日常的な場面で、自分の体重を減らしたいとか、ストレスを発散させたいと思ったとき、どのような選択肢があるだろうか。あるいは医療や保健の場面で、投薬/手術/看護/介護/指導などに関連して、どのような選択肢があるだろうか。幾つもある選択肢から、どれかを選ぶとき、何がエビデンスになっているだろうか。あなたの周囲の人に、具体的な状況に関連して、詳しく話を聞いてみよう。 |
|
7・ 19 /1 |
丸地 |
福祉と保健 |
福祉と保健医療の連携を考える。
|
共生の時代、Quality Management, Think
globally-act locally, 学習理論、実践体系 |
これまで学んできた公衆衛生的接近法を、総括するとしたら、どのような取りまとめ、理論化が可能だろうか? |