- はじめに -

 福岡大学医学部微生物・免疫学講座は,それまでの「微生物学講座」と「寄生虫学講座」の統合を経て,平成15年4月に設立されました.平成18年4月1日より,廣松賢治が主任教授として着任しました.講座としての研究は、細胞内寄生性病原体(性感染症クラミジア,肺炎クラミジア)およびインフルエンザウィルスを軸に,(1)病原体に対する宿主の自然免疫系の応答,(2)宿主免疫系に対する病原体のエスケープ機構の解析,および(3)病原体由来糖質抗原に反応するCD1拘束性T細胞応答の解析などの感染免疫等を研究しています.教育面では,生体防御学I(免疫学)生体防御学II(微生物:学細菌学,ウイルス学,真菌学)および生体防御学III(寄生虫学の講義、実習の医学教育)を担当しています.

現在,医学生および大学院生に最新の生体防御学を教育する体制を整えています.



- 教授からの挨拶 -


主任教授 廣松賢治

 私は,平成18年4月1日から永山在明主任教授の後任として微生物・免疫学講座に着任しました.昭和61年に九州大学医学部卒業後,3年間の神経内科研修を経て,九州大学生体防御医学研究所 野本亀久雄名誉教授および吉開泰信教授の御指導の下で生体防御学を学びました.リステリアや結核感染マウスモデルにおけるγδ型T細胞の感染早期の防御能などを明らかにし,これらの研究はウイルスや原虫などの種々の病原体による感染症におけるγδ型T細胞の動態や機能解析研究の先駆けとなりました.

 その後,名古屋大学医学部(吉開研究室)の助手を経て,米国ハーバード大学医学部(Brigham& Women's hospital)に留学し,結核菌由来の糖脂質がCD1分子によりT細胞へ抗原提示され,抗結核防御免疫能を持つCD8キラーT細胞を脂質ワクチンにより誘導できることを証明しました.このCD1脂質ワクチンは今日までのペプチドあるいはDNAを中心としたワクチンを相補するものであり,今後非常に有望でかつ重要な分野と考えられます.これからは難治性の病原微生物と宿主免疫応答の解析,特に動物モデルによるγδ型T細胞やNKT細胞などの早期誘導型T細胞を動員した新しい免疫サーベイランス,およびCD1抗原提示システムを用いた糖脂質ワクチンの基礎研究を推進したいと考えています.

 近年,国際的に重症急性呼吸器症候群(SARS)や高病原性鳥インフルエンザの発生が相次いで起こり,またエイズ,マラリア,結核,肝炎ウイルスなどの感染者数は依然として多く,これらの新興・再興感染症に対する新しい取り組みが必要となっています.福岡大学医学部での教育・研究を通して,生体防御学の興味を持ち,将来臨床,基礎を含めてこの分野で活躍できるような人材を発掘できるように励んで行こうと思っています.