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ボストン留学記

はじめに。この「留学記」は未完であり、現在進行中である。

留学までの流れ

小生は福岡大学医学部を2002年に卒業し、福岡大学病院第一外科(現消化器外科)に入局した。その後は大学病院や関連施設で一般外科、消化器外科、乳線・内分泌外科、麻酔科、呼吸器外科、心臓血管外科などの修練を積んだ。 2007年より再生・移植医学講座にて大学院生として、臨床膵島移植や移植免疫に関する研究を行った。その間、Dallas (Texas州)にあるBaylor Universityへ2週間の研修に派遣して頂いた。また、国際学会において口演で発表する機会を得ることが出来た。

このような経験を積むうちに海外で研究することに興味がわいてきたのかもしれない。2011年より半年間のポスドクを経て、同11月より渡米した。

現在Massachusetts州、BostonにあるHarvard Medical School の関連施設であるMassachusetts General Hospital(MGH)にて、Research Fellowとして1型糖尿病に対する免疫治療について研究を行っている。

Bostonについて

Bostonはアメリカでも有数の大都市であり、もっとも古い歴史の街である。アメリカの独立に大きく関わった地として、街中に歴史的建造物や史跡が散在し、その隣に真新しい建造物があったりして不思議な空間が広がっている。

また、Bosotonは世界最大の学術都市でもある。ハーバード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)、ボストン大学、タフツ大学など世界的にも著名な大学が多数ある。Bostonに暮らす学生、研究者の数も全米随一である。

さらには、アメリカ4大スポーツ全てでBostonをホームタウンにしているチームがあり、この十年の間に全てのチームが全米チャンピオンになっているというスポーツ都市でもある。春には世界最古のシティ・マラソンであるボストン・マラソンが開催され、世界中から観光客が応援に集まる。

芸術・文化の分野においてもボストン美術館(Museum of fine arts)やイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館などの一流の美術館がある。バークリー音楽大学があるためか音楽の都市としても有名である。かのボストン交響楽団やボストン・ポップスなどクラシカルな音楽もある一方、ハードコア・パンク発祥の地としての一面も併せ持っている。

シーフードが美味しく、クラムチャウダーやロブスター、オイスターなど海の幸が豊富である。

2012年4月には、成田-Boston間で直行便が就航する。ますます日本とBostonを行き来する人間が増えるだろう。

研究について

現在行っている研究は、既にPhase Ⅰの臨床治験を終えた糖尿病治療に関連することであり、全てHumanを対象にした研究である。

近年Ⅰ型糖尿病は、全てが解明されたわけではないが、自己免疫疾患の一つとして認識されている。簡単に言うと、Ⅰ型糖尿病患者のインスリン産生細胞は、本来は自分の体を守るために体内に存在する免疫担当細胞から攻撃され、破壊され、インスリン産生が出来なくなる。そのためインスリン治療が必須になり、長時間経過すると全身合併症をも併発する。

そこで、この自分自身の体を攻撃している免疫担当細胞を正常な状態に戻すことが出来ればいいのではないか?実際に当研究室の過去の研究では、重症Ⅰ型糖尿病を発症したマウスの免疫担当細胞を正常な状態に戻すことで、インスリン産生細胞が再構築され、正常血糖化する(糖尿病が治った!!)ことが分かっている。

日本ではなかなか出来ないHumanを対象にした研究であり、新しい糖尿病治療の誕生に関わっているかもしれないという興奮を感じている。

最後に、今回アメリカ留学にあたり研究先をご紹介頂いた福岡大学再生移植医学講座教授安波先生、同准教授小玉先生に改めて御礼を述べて、未完の「留学記」としたい。

2012年4月 Bostonにて
米良 利之