赤ちゃんやこどもの「脱腸」は、「そけいヘルニア」と呼ばれる病気で約50人に1人に起こります。胎児期におなかの底ができる時に左右の内鼠径輪という場所に刀の鞘のような形の腹膜のくぼみが作られます。多くの場合、このくぼみは自然にふさがりますが、開いたままになっていると、腹圧によってこのくぼみに小腸や卵巣が落ち込んで、足のつけね(そけい部)や陰のうがふくらむ脱腸をおこします。おむつ交換や入浴の時にはふくらんでいたのが、泣きやんでおとなしくなると引っ込んでしまうのが特徴です。普段は違和感や痛みなどはありませんが、はまりこんで抜けなくなってしまうと、腹痛や腸閉塞、脱出臓器の血行障害などを起こす嵌頓(かんとん)ヘルニアとなるため、ヘルニアが発見されたら早めの手術が必要です。
小児の鼠径ヘルニア(脱腸)は、その原因であるお腹の底の落とし穴(ヘルニア門)を結んで閉じる手術が必要です。従来は下腹部を切開して、ヘルニア門の部分を結ぶ方法で手術されていました。20年前に臍の底から腹腔鏡を挿入して、拡大した画面で観察しながらヘルニア門の周りに糸を回して結ぶLPECという手術が開発され、傷が目立たない、確実な方法として採用している施設が増えています。
福大病院小児外科では、腹腔鏡と器具を同じ臍の底のきずから挿入する単孔式LPEC手術(SILPEC)という方法で傷を減らす工夫をしています。
(腹腔鏡手術の所見 男児のそけいヘルニア手術)