福岡大学病院 腎移植 いのちの贈りもの
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おしらせ

2020.10.05
2020.10.5 スタッフを更新しました。

2020.07.30
ご報告
2020年4月から2例の生体腎移植を行いました。ドナー、レシピエントともに術後順調に回復をしています。
新型コロナウイルス感染症の影響により、当院での移植手術も幾度となく検討を繰り返し、移植術を行うことができました。

2020.05.20
ホームページを開局しました。

ごあいさつ

腎泌尿器外科 診療准教授 中村信之  腎臓・膠原病内科 主任教授 升谷耕介
  福岡大学病院では、腎臓膠原病内科、腎泌尿器外科や小児科などとの各科の緊密な協力による「総合力による腎臓移植」を行っております。
  当院での腎移植の歴史は長く1984年に第1例目が行われて以来、生体腎移植、献腎移植、小児の腎移植、脾臓摘出回避のABO不適合腎移植などの最先端の腎移植を行っております。
  皮膚の切開が少なく、出血が少ないなどの生体腎移植ドナー(腎提供者)の負担を軽減した「鏡視下の腎臓摘出」を「鏡視下手術のスペシャリスト」が行い、腎移植レシピエント(腎移植者)の手術は日頃から尿路系の手術を専門に行っている「泌尿器科医」が行い、合併症の少ない良好な成績を収めております。
  また米国オレゴン州のOregon Health Science UniversityのJohn Barry教授や国内の主要な移植病院との連携により最新の情報を得て臨床の実際および臨床研究に応用しております。
  福岡大学病院は、病院全体として移植医療を推進しており、「ひとり一人の患者様を大切にした患者様を中心としたチームワーク」で移植医療に取り組んでおります。

  In Fukuoka University Hospital, we perform "coordinated kidney transplants" under the close cooperation with the department of Nephrology and Rheumatology, cardiovascular surgery, general surgery, anesthesia, psychiatry and urology. The history of kidney transplants in our hospital has been ongoing since 1984. Laparoscopic donor nephrectomy to reduce the burden of the donor from 2005 and ABO-incompatible kidney transplantation from 2009 were started and have produced good results. In addition, up-to-date immunosuppressive drugs, laboratory procedures, and other technology have been introduced and, for many patients, have brought them back to a normal life without having any rejections or infections. Kidney transplant plays an important role in the mind and physical growth for children. We work on transplant medical care in which teamwork takes good care of each patient.

スタッフ

中村信之
腎泌尿器外科 診療准教授
中村信之
升谷耕介
腎臓・膠原病内科 主任教授
升谷耕介
安野哲彦
腎臓・膠原病内科 講師
安野哲彦
伊藤健二
腎臓・膠原病内科 講師
伊藤建二
宮崎健
腎泌尿器外科 助教
宮崎健
高橋宏治
腎臓・膠原病内科助教
高橋宏治
横山陽子
レシピエント移植コーディネーター
横山陽子
医事課 厚生医療担当 本村晨弥
医事課 更生医療担当
本村晨弥
看護主任:伊藤 看護師長:浦田 看護主任:石本

腎移植について

臓移植は末期腎不全により腎臓が機能しなくなった方に健康な方の腎臓を移植する医療です。移植した腎臓が生着すると腎臓は正常に機能します。免疫抑制剤を飲む以外は、普通の人と同じような生活を送ることができます。
 また、女性はいくつか条件はありますが、妊娠出産することも可能です。

腎移植には 生体腎移植 と 献腎移植 の二つがあります。

腎移植について

臓移植は末期腎不全により腎臓が機能しなくなった方に健康な方の腎臓を移植する医療です。移植した腎臓が生着すると腎臓は正常に機能します。免疫抑制剤を飲む以外は、普通の人と同じような生活を送ることができます。また、女性はいくつか条件はありますが、妊娠出産することも可能です。
腎移植には 生体腎移植 と 献腎移植 の二つがあります。

【生体腎移植とは】

 親、子、兄弟などの血縁者や配偶者から片方の腎臓を移植します。腎臓の摘出と移植を同時進行で行うことができるので、移植された腎臓の働きも良いです。生体腎移植の場合は翌日から透析の必要がなくなることが多いです。献腎移植の件数が少ない日本においては生体腎移植が主流となっていますが、家族からの提供はあくまでも自発的な善意に基づくものでなければなりません。
 血液型は、以前は適合していることが条件でしたが、現在は血液型不適合でも移植は可能です。HLA検査(白血球の型が合っているか)など組み合わせが合っているかの検査も行います。
 生体腎移植は親族からの提供に限られ、親族とは6親等以内の血族、3親等以内の姻族となります。生体腎移植の場合は3親等以内で手術を行うことがほとんどです。
 

【献腎移植とは】

献腎移植とは心停止下や脳死となった方からの善意により腎臓が提供される移植です。献腎移植を行うためには事前に日本臓器移植ネットワークに登録を行う必要があります。移植を希望する施設で登録の手続きを行います。
 心停止や脳死となった方が臓器提供の意思を示されていた場合は、ご本人の意思を尊重して臓器移植への準備が始まります。その方と血液型やHLA型(白血球の型)が適合し、尚かつ登録後の待機年数が長い方から移植が決まります。
 

当院では小学生のお子さんから成人まで幅広く移植を行っています。
生体腎移植・献腎移植のどちらも行っております。

【福岡大学病院での生体腎移植】

生体腎移植001
 

 移植を考えられているドナー(腎臓を提供する側)候補の方とレシピエント(腎臓を受ける側)の方と一緒に受診し、移植医から移植についての説明をうけていただきます。
意思に変わりがないことを確認して一次検査(感染症などの採血、検尿、心電図、レントゲン)を行います。一次検査で問題なければ次の検査を進めていきます。
 生体腎移植の場合、移植前の検査はドナーもレシピエントも約3ヶ月かかります。これは、全身の評価が必要となるためです。活動性の感染症や進行性の悪性腫瘍がないか、腎臓を片方提供しても問題ないか、など検査を行うためです。
 

生体腎移植002

 
 また、ドナーとレシピエントに利害関係がないことを第3者から評価します。当院では精神科外来を受診していただきます。移植専門の精神科医が関わります。
 移植は急を要するものではなく、大切な腎臓を提供していただき、移植する医療ですので、しっかりと検査を行っていくことが大切です。
 
 注)移植前の検査費用について:当院ではドナーの検査費用は毎回全額負担となります。これは検査内容自体が健康診断となるため保険適用外です。ドナーとして移植が行われた場合はレシピエントの更生医療で検査費用は全額戻ってきます。

 
生体腎移植003

 ドナーは手術日の2日前に入院していただきます。
 レシピエントは「血液型適合の場合」と「血液型不適合の場合」の2パターンあります。

血液型適合の場合
 手術の1週間前に入院していただきます。これは免疫抑制剤の内服を1週間前から開始して手術までに免疫抑制剤の血中濃度を調整するためです。
 
血液型不適合の場合
 手術の2週間前に一度、一泊二日で入院しリツキサン*1 というお薬を点滴で投与します。また、免疫抑制剤の内服を開始します。その後は手術の1週間前に入院していただきます。血液型不適合の場合は透析室で血漿交換*2 を行う必要があります。
*1リツキサンとは:血液型に対する抗体を作り出すのを抑える働きがあります。
*2血漿交換とは:血液透析のように体外でフィルターを用いて血液型に対する抗体を除去します。
 

生体腎移植004
 

 入院する病棟は5階東病棟(腎・泌尿器・膠原病病棟)です。
 当院は2016年1月から腎臓・膠原病内科と腎泌尿器外科が統合した病棟となりました。移植前の腎臓内科での透析から移植後の腎泌尿器外科に至るまで、同じ病棟で行うことができます。血液浄化療法センターも腎臓内科の医師や看護スタッフが関わることができるため、移植前から移植後まで、患者さんの状態をスタッフ全員周知していますので安心して移植に望むことができます。


生体腎移植005

 当院では移植術の曜日は以下のようになります。
レシピエント(提供を受ける人)
月曜日 / 血液型適合移植かつ透析未導入の方
水曜日 / 維持透析をされている方、血液型不適合移植の方
 
ドナーもレシピエントもほぼ同じ時間に手術室へご案内します。移植は同じ手術室内で行われます。


生体腎移植007
ドナー(提供する人)

8時30分頃に手術室へ行きます。手術時間は3時間程度で、麻酔から覚めたあとに、お昼過ぎには病棟へ戻ります。
術後は問題なければ数日で尿道カテーテル(おしっこの管)やドレーン(浸出液を体外へ出す管)、点滴はとれます。
およそ10日前後で退院となります。
 

レシピエント(提供を受ける人)

「手術について」
8時30分過ぎに手術室へ行きます。
開腹し、ドナーの腎臓が摘出された後、すぐに移植ができるように準備をしておきます。手術は夕方には概ね終了します。
「手術後について」
手術後はSICUという集中治療室へ入ります。
翌日に病棟個室へ戻ります。術後は全身状態をみながらではありますが、術後1週間ほどで尿道カテーテル(おしっこの管)が取れます。傷に近くににあるドレーン(浸出液を体外へ出す管)は浸出液の量が少なくなれば取れます。点滴は、首の近く(中心静脈カテーテル)と手背との2箇所あります。首の近くに入っている点滴は数日でとれます。手背から入っている点滴は抗生剤や食事の状況などで取っていきます。
「日常生活について」
・入浴は術後の傷の状態を確認しながら決めています。
・術後2?3週間は個室で生活していただきます。
 手術後は免疫抑制剤を多めに投与するので、感染予防が必要となるためです。
・免疫抑制剤は薬の血中濃度をみながら内服量を決めていきますので、ほぼ毎日採血が必要になります。

生体腎移植009

ドナー(提供する人)
 退院後は手術の1ヶ月後に外来受診をしていただき、腎臓が一つになっても問題なく機能しているか検査を行います。その後は1回/年の受診となります。ドナーも1回/年は当院受診をおこなっていただくようにしています。
退院後の仕事復帰には個人差がありますが、退院して2週間程度は無理をせず自宅療養を勧めています。
 
レシピエン(提供を受ける人
 術後2?3週間で退院となります。
退院後は免疫抑制剤の量など調整が必要ですので、始めは1週間に2回は受診をしていただきます。腎機能や免疫抑制剤の量などが安定してきたら1回/月の受診となります。移植外来は火曜日・木曜日の午前中です。外来受診の時は採血と採尿を毎回行います。血中濃度の測定もあるので、受診の朝は免疫抑制剤は内服せずに来院し、採血が終わってから内服してください。
 診察前に、移植コーディネーターが体温、血圧、体重測定を行います。気になることやちょっとした疑問など、何かありましたら気軽にお尋ねください。

生体腎移植010


【福岡大学病院での献体腎移植】

献腎移植を考えている患者様は、福岡大学病院の腎移植コーディネータ?に電話連絡して下さい。
お電話もしくは来院して頂き、説明を聞いて頂きます。

献腎移植は、献腎提供があった場合に事前にJOTに登録している方の中から決められた基準により候補者として選定されます。説明を聞いて頂き、献腎移植を希望する方には、臓器移植ネットワーク(JOT)に登録するための登録用紙をお渡しします。登録用紙にご本人と透析施設の主治医(透析導入前の場合は、通院中の腎臓内科医)に記載して頂き、福岡大学病院を受診して頂きます。

登録用紙を持参して受診して頂いた際に、登録に必要な検査を受けて頂きます。移植候補者の選定に必要なHLA検査などを行います。

日常生活を送りながら、亡くなった方からの腎臓の提供をお待ち頂きます。数年を要することもあります。献腎提供の連絡は夜間電話で行うこともあります。連絡後、直ぐに来院して頂く事があります。日頃から緊急の連絡が取れるように、また直ぐに来院できるように準備しておいて下さい。
JOTに規定により、年1回福岡大学病院を受診していただきます。

献腎移植候補に選定され、来院後に行う手術前の検査で問題なければ、緊急で献腎移植術を行います。

生体腎移植とほぼ同様に1ヶ月程度の入院して頂きます。

手術件数

年 / 生体腎移植件数 / 献体腎移植件数
1984年 / 1件 / 1件
1985年 / 0件 / 0件
1986年 / 2件 / 0件
1987年 / 1件 / 0件
1988年 / 1件 / 0件
1989年 / 1件 / 0件

1990年 / 3件 / 0件
1991年 / 3件 / 0件
1992年 / 1件 / 0件
1993年 / 2件 / 1件
1994年 / 0件 / 1件
1995年 / 2件 / 0件
1996年 / 1件 / 0件
1997年 / 1件 / 0件
1998年 / 0件 / 0件
1999年 / 0件 / 0件

2000年 / 1件 / 0件
2001年 / 3件 / 0件
2002年 / 1件 / 0件
2003年 / 0件 / 0件
2004年 / 2件 / 1件
2005年 / 2件 / 1件
2006年 / 1件 / 2件
2007年 / 1件 / 2件
2008年 / 1件 / 0件
2009年 / 5件 / 1件

2010年 / 6件 / 1件
2011年 / 2件 / 0件
2012年 / 1件 / 0件
2013年 / 3件 / 0件
2014年 / 5件 / 0件
2015年 / 0件 / 0件
2016年 / 2件 / 0件
2017年 / 4件 / 0件
2018年 / 2件 / 0件
2019年 / 7件 / 1件

2020年 / 1件 / 0件
合計
生体腎移植 69件
献体腎移植 12件
(2020年 3月 現在)
[PDF:2.37MB ダウンロード]

いのちの贈りもの
あなたの善意をいかすために
腎臓の提供とは
<執筆>
国際医療福祉大学 熱海病院
寺岡 慧
福岡大学病院 泌尿器科
中村 信之
聖マリアンナ医科大学病院 腎臓・高血圧内科
柴垣 有吾

[PDF:2.19MB ダウンロード]

いのちの贈りもの
「腎臓」を大切にするために
腎臓移植後の健康管理
<執筆>
国際医療福祉大学 熱海病院 病院長
寺岡 慧
福岡大学病院 泌尿器科 講師
中村 信之
聖マリアンナ医科大学病院 腎臓・高血圧内科 准教授
柴垣 有吾