治療関係

2017/9/19
消化管疾患の最新治療

当科では食道から大腸までの消化管疾患に対し、幅広く診療を行っています。特徴的な疾患としては炎症性腸疾患、上下部腫瘍に対する内視鏡治療、小腸疾患、消化管出血があり、各疾患の最新治療について紹介させていただきます。

1.炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは潰瘍性大腸炎(UC)と クローン病(CD)からなる慢性の炎症性疾患です。患者数は急激に増加し、UCは日本全国で約20万人に達し世界第二位の患者数となっており、CD も現在約4万人に達し、今後も増加が予想されています。これらの疾患は未だ発症の原因は不明で、完治させる治療法はありませんが、適切な治療が行われれば、安定した生活を送ることができます。当院では、約400名の患者さんを診療しています。抗TNFα抗体製剤などの分子標的治療、免疫抑制剤など専門的治療だけでなく、国際共同治験を含む多数の臨床試験へ参加し、世界最先端の医療に携わっています。

2.上下部腫瘍に対する内視鏡治療

最新の内視鏡機器を使用し、食道・胃・大腸の早期がんに対して、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を積極的に行っています。従来、輪っかをかけて切除するEMR(内視鏡的粘膜切除術)を行っていましたが、切除できるサイズの限界・遺残再発等の問題点がありました。これを克服した治療法がESDで、高周波ナイフにより粘膜下層を切開・剥離し、大きな病変でも一括で切除できます。また従来の開腹手術が必要であった病変も治療可能となりました。治療は1-2日間の絶食と3-7日間の短期入院で行われ、退院後は通常の生活を送れます。当科では2005年よりESDを導入し、2016年12月までに約900例の治療を行っています。

ESD治療

【治療前:マーク内が病変】

【ESD治療後】

3.小腸疾患

小腸は全長約6mに及ぶ体内で一番長い管腔臓器であり、以前は病気の診断は小腸X線検査が主流でしたが、詳細な評価が困難であり、“暗黒大陸”と言われていました。しかし、2003年にダブルバルーン式小腸内視鏡が、2007年に小腸カプセル内視鏡が保険認可され、小腸疾患の診断・治療が飛躍的に向上しました。当科では2004年にダブルバルーン式小腸内視鏡、2009年に小腸カプセル内視鏡、2016年にパテンシ―カプセルを導入して診断・治療を開始し、現在までダブルバルーン式小腸内視鏡を約150例、小腸カプセル内視鏡を約300例に行っています。

小腸癌

【カプセル内視鏡】

【ダブルバルーン式小腸内視鏡】

4.消化管出血

24時間体制で消化管出血に対する内視鏡的治療を施行しています。2016年度は、約70例の上部消化管出血に対し内視鏡的止血処置を施行しました。下部消化管出血は、約50例の大腸憩室出血や出血性直腸潰瘍等の出血症例に対し、止血処置を施行しています。内視鏡的止血法の選択は、2015年8月に内視鏡学会より発行された、最新の非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドラインを参考に診療を行っています。

マロリー・ワイス症候群に対する止血

【治療前】

【治療後】

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