第13回 教授の独り言(2025.4.)
医学教育における自由と規律
私が福岡大学に着任した時に新入生だった学生さんたちが2025年3月に卒業となりました。教員としてフルに6年間関わった学生さんが医師への道を歩むことになり、ようやく自分としても福岡大学での医学教育を一通り経験させていただきました。学生さんには驚かされることもあれば、感心させられることも沢山あります。学生教育において自由と規律をどう両立させるか悩み続けた6年間でした。以前は「自分が学生の時はこうではなかった」という気持ちが強かったように思います。医学生には一定の規律が必要です。しかし、彼らと話していて学んだことは、あれはするなこれはするなではなく、新しいやり方を模索した方が得られるものが多いということです。例えば生成AIも、学生の時はそんなものに頼ってはいけないとつい思ってしまうのですが、むしろどう活用するかを学生さん達と一緒に考えた方が発展的です。私自身も若いころは既存の価値観を押し付けられることに反発心を覚え、新しいやり方を求めてきたように思います。気づくのにずいぶん時間がかかってしまいましたが、学生さん達もきっとそう思っているだろうと想像します。新たに医師となる皆さんには是非、自由な発想で新しい時代を切り拓いて欲しいと思います。これから先、様々な壁にぶつかるでしょうけれど、人間は失敗や過ちとは無縁ではいられません。そのような場面に遭遇してもあきらめずに希望を持って前に進んで欲しいと思います。皆さんは6年間を通じて、教員としての私を成長させてくれました。結局、勉強させてもらったのは自分の方かもしれません。高い山こそ登る価値があり、容易ではないことにチャレンジする時こそ皆さんの最高の力とパフォーマンスが引き出されると信じています。