専門医の声Essay/Weblog
読書の秋 2021年10月
担当:西 建剛
みなさまはじめまして!福岡大学医学部形成外科の西 建剛と申します。 最近、朝晩がすっかり冷え込み、日が落ちるのも早くなりました。「おうち時間」も長くなりましたし、今月はわたくしから「読書の秋」としておすすめの本を紹介します。
- 福沢諭吉「福翁自伝」
- 長谷川英佑「働かないアリに意義がある」
- 吉田修一「国宝 上・下巻」
1.福沢諭吉の若かりし頃から老年に至るまでの自伝で口述体で書かれています。長崎への遊学から、兄の死により一度は故郷の中津に戻ります。その後、諭吉は悶々とした時間を郷里で過ごしますが、母親や上長を説得して、自身の知的欲求のおもむくまま、緒方洪庵の適塾へと転がり込みます。道中、無銭で船に乗ったり自由奔放な諭吉の姿におもわず引き込まれてしまいます。わたくしは時間を忘れてあっという間に読んでしまいました。とくに若い方におすすめです。
2.アリの群れの観察による著者の学術見解を呈示していく自然科学の本ですが、論文を読むよりも面白く、どこか憎めないアリたちの行動とわれわれ人間社会の類似性。働かない=有事に備える必要悪というようにも読みとることもでき、組織の中での立ち回り方を考えさせられるよな名著です。普段、自然科学になじみのない方に気軽な気持ちで読んでいただきたい本です。
3.わたくしの出身高校(長崎県立長崎南高等学校)の先輩である吉田修一先生の新作。主人公は反社会的勢力の息子と有名歌舞伎俳優の息子の二人です。舞台は故郷「長崎・丸山」から始まります。まるで長崎の街を駆け回っているかのような臨場感のある冒頭部から一転、歌舞伎の世界へと舞台を変え、目まぐるしく若者たちが駆け回り、挫折と栄光。度重なる窮地からの反転攻勢としたたかに逞しく生きる登場人物たちの魅力の詰まった小説です。最近、どこかお疲れ気味の中高年の皆様にとくにおすすめいたします。
以上、形成外科とは全く接点の無い3つの本をご紹介いたしましたが、機会がありましたらまたお目にかかろうと思います。それではみなさま風邪などひかれませぬよう、ご自愛くださいませ。