教室紹介

当講座は、基礎医学・臨床医学を担当する講座として小玉教授のもと教育・臨床・研究に従事しております。教育においては、医学部生のみならず他学部学生、大学院生の学生教育を行っています。実際に当教室より数多くの大学院生が研究論文を報告し、医学博士を取得してまいりました。また研究に関しては“Seeding” から “Translational Research” に至る研究テーマとして、膵島移植を主とする細胞移植・移植免疫に関する研究をはじめ、細胞保存・臓器保存に関する研究や、インスリン産生細胞再生、創傷治癒、血管新生、リンパ管新生、副腎皮質ホルモン産生細胞再生等の再生医療に関する研究等、幅広くプログラムを展開しております。

当講座の臨床業務としては、重症インスリン依存状態糖尿病に対する膵島移植を行っております。膵島移植はインスリン依存状態糖尿病に対する新しい治療法として、海外では2000年に、本邦では2004年に開始されました。膵島移植は、脳死および心停止下臓器提供ドナーより提供された膵臓から、インスリン産生細胞を含む内分泌細胞塊である膵島のみを分離して移植する細胞移植治療です。九州における第1例目の膵島移植は、2006年11月に福岡大学病院で実施しました。現在、本邦で先進医療Bとしての臨床膵島移植認定施設は6施設に限られており、九州では福岡大学が認定施設となっており多施設共同で臨床試験を進めています。関係各所と連携しながら、福岡大学病院で一人でも多くのインスリン依存状態糖尿病の方に膵島移植を提供できるよう体制整備を行っています。さらに、膵島移植の治療成績向上を目指し、免疫学的・分子生物学的・組織工学的なアプローチで研究を展開しております。先述のように膵島移植は細胞移植治療であるため、遺伝子導入や移植膵島再生を誘導する手法など、様々な細胞修飾を加えることが可能です。このため基礎研究を、最も臨床に反映することができると考えられており、今後の治療展開が期待されています。

近年、膵島移植のみならず移植医療では、慢性的な臓器提供ドナー不足に直面しています。これらの解決策として、ヒト・ドナーに依存しないブタ等の異種動物をドナーに用いる異種移植研究が盛んに行われております。異種膵島移植の一つの方法である免疫隔離膜でブタ膵島をカプセル化し移植するバイオ人工膵島移植は既に海外で臨床治験が進められており、当研究室でもバイオ人工膵島移植の研究に取り組んでいます。また、本邦で加齢黄斑変性症に対するiPS細胞由来の細胞移植が臨床治験として開始され、今後の再生医療の更なる発展・臨床応用が期待されています。当講座は、様々な病気に対する細胞治療・再生医療の基礎研究を行い、実際の臨床治療導入までを視野に入れて学部・学科横断的に、また産学連携で企業と共同で研究活動をすすめております。

今後、細胞治療および再生医療は先進医療の中核を担うものと考えられています。細胞治療や再生医学研究に興味がある方は、ぜひ気軽に医局を訪ねてください。

平成29年10月 文責 吉松軍平