再生医学研究所 2023年3月末で終了となりました。
研究内容

再生医学はiPS(induced pluripotent stem)細胞の誘導やクローンをなど革新的な技術開発をはじめ、近年飛躍的な進歩を遂げている医療分野のひとつです。しかしながらその進歩は、すべての治療領域を包括しておらず、また常に倫理的問題の解決が問われるのが現状です。

再生医療はその臨床施行される大部分が、細胞治療として患者に提供されています。小玉は細胞治療に関して 2000 年より Harvard Medical School で多数の研究成果を報告してきました。血管リンパ管再生(Ann surg 232: 653-7, 2000., J Exp Med 201: 1089-99, 2005., Blood 109:1010-7, 2007., Circulation 118: 52-7, 2008.)をはじめ、唾液腺再生(Ann Rheum Dis 66: 812-4, 2007., PLOS ONE 7:e38615, 2012., Cytotherapy 16; 412-23, 2014.)、蝸牛再生(Immunol Cell Biol 86:301-9, 2008., Horm Metab Res 40: 137-46, 2008.)、ホルモン産生細胞の再生(Nat Med 6: 1065-6, 2000., J Clin Invest 108:63-72, 2001., Science 302: 1223-7, 2003.)などです。更に 2009 年からは福岡大学で各診療科と連携し、血管リンパ管再生(Nat Commun 2: 318, 2011., Materials 5: 501-11, 2012., J Vasc Surg 57: 1090-9, 2013., PLOS ONE 2014, In press)、尿道再生(J Urol 187: 1882-9, 2012.)、皮膚・毛根再生(Wounds 26:163-71, 2014.)、内分泌腺細胞の再生(Tissue Eng 15:3321-9, 2009., Int J Biochem Cell Biol 42: 1651-60, 2010.)について再生医学研究成果を発表してきました。しかし再生医学研究テーマの臨床応用に向けた進捗と、学術的な進達レベルは分野により必ずしも足並みが揃い一致するものではなく、研究所として萌芽研究から臨床試験申請準備段階、臨床試験施行中のテーマを広く統括する必要があります。

多岐に渡る細胞治療による再生医学テーマの中で、特に疾患罹患率や社会貢献度の高いテーマとして虚血肢や心血管の虚血疾患に関わる血管リンパ管再生チーム、脳梗塞・脳虚血や脊髄損傷後の再生に関わる神経再生チームをまず編成しました。また比較的罹患率の高い疾患としてドーパミンホルモンの欠如するパーキンソン病に対するドーパミン産生細胞の再生や、難治疾患として先天性副腎皮質ホルモン欠損を補う副腎再生、慢性膵炎・糖尿病治療に関わるインスリンホルモン産生細胞の再生も加え内分泌細胞再生チームを編成しています。更に乳房再建や美容形成的な即時的で現在施行されている細胞治療も、既存の幹細胞群以外にも今後新たな細胞選択で治療効果改善の余地がある為、現在臨床試験がすすめられている、骨髄由来幹細胞と脂肪由来幹細胞等の機能評価比較を行う幹細胞選別及び評価チームを設置します。

研究期間内成果到達目標

  • 動物実験による骨髄由来幹細胞と脂肪由来幹細胞等の機能評価および臨床試験申請
  • モデル動物実験による機能改善評価おもに萌芽研究
  • マクロファージ前駆細胞およびペリサイトの誘導による臨床研究および臨床試験申請
  • 副腎再生・ドーパミン産生は動物実験による萌芽研究、インスリンホルモン産生細胞の再生は自家・異種移植による臨床試験施行

再生医療に関する4チーム以外に、医学部倫理委員も兼任する、人文学部・佐藤が先進医療技術や生命倫理に関する総括指導を行う。更に最新の細胞イメージ技術の提供指導で理学部・中川が、ペリサイトおよびその前駆細胞治療による機能評価を薬学部・道具が、血管・神経再生で行う。また学外か浜松医科大・平川が分子生物学的指導を担当する。