2020年7月1日開設、福岡大学病院救命救急センター併設型ECMO治療専門施設
センター長 仲村 佳彦
副センター長 川野 恭雅
治療例-ECMO搬送
ECMO(エクモ)は”Extracorporeal membrane oxygenation”の略であり、日本語では
「体外式膜型人工肺」と呼ばれています。
ECMOは血管内に留置したカニューラから血液を大量に取り出し、血液を人工肺に
通すことで血液を酸素化させます。
そして、酸素化した血液を体内に戻すことで肺や心臓の機能をECMOで肩代わりすることが
できます。
ECMOは大きく3つに分類されます。
・呼吸ECMO (Respiratory ECMO)
・循環ECMO (Cardiac ECMO)
・ECPR
人工呼吸器や昇圧剤では生命を維持できない程に重篤な呼吸・循環不全に対して
ECMOを用いることで生命を安定化させます。
そして、ECMOでサポートしている間に根治療法を行い、患者を救命する戦略です。
近年、ECMOは予後を改善させる可能性が注目されています。
年間10件以上の高いECMO管理実績当センターは特に呼吸ECMOに力を入れ、年間10件以上の呼吸ECMOの管理実績があり、生存率は70%以上と世界レベルです。
ECMO適応となる重症呼吸不全の症例は決して多くありません。重症呼吸不全の患者の救命率向上において、最も重要であることは、ECMO管理に習熟したECMOセンターに集約化させることと指摘されています。
そこで、ECMOセンターとして、福岡大学病院救命救急センターではECMO管理経験を積んだ医師を中心に、重症呼吸不全の患者の受け入れに積極的に取り組んでいます。
海外のECMOセンターで研修を
重ねたECMO管理スキル
一流のECMOセンターであるスウェーデンのカロリンスカ大学病院に複数のスタッフを派遣するなど、継続的に海外施設での研修を重ねることでスタッフのECMO管理のレベルアップを図っています。
「ECMO搬送」対応
人工呼吸器搬送が困難な程に呼吸状態が不安定な場合は当センターのスタッフが紹介元病院まで出向き、ECMOを導入した上で我々が患者を搬送するECMO搬送にも対応できます。
多職種で遂行するハイレベルなECMO管理
ECMOセンターとして医師、臨床工学技士、看護師、理学療法士などの多職種でECMO管理を遂行し、救命率向上を目指します。
九州初のECMO Car 導入2021年10月1日(金)、福岡大学病院では、ECMOの装着を必要とする重症患者の搬送を可能にする「ECMOカー」を九州で初めて導入し、運行を開始しました。
今回導入した「ECMOカー」は、ECMO治療が可能なストレッチャーを搭載し、ストレッチャーの両側での作業が可能となるスペースも確保されています。また、治療をしやすくするために天井も高く設計され、「動く集中治療室」として期待されます。車内には通常の救急車の約10倍の高容量バッテリーや同約2倍の酸素ボンベを搭載しており、福岡県内外の広域搬送が可能となります。
ECMOカーの導入で、患者さんにより早期にECMOを装着し、適切な施設に搬送することができるようになります。患者さんを待つのではなく、こちらから出向いてでも早く救命処置を行う“攻めの救急”をさらに進めていきます。
「動く集中治療室」の機能性
■ ECMO CarにはECMO搬送専用ストレッチャーを搭載ECMOを装着した重篤な呼吸不全患者の搬送に特化した「動く集中治療室」として活用が期待される
■ 車内は活動スペースが広く設けられ、ストレッチャーの両サイドから処置が可能
■ 緊急時には車内でのECMO利用も可能
■ 高容量バッテリーや酸素ボンベを搭載し、県内外の広域搬送が可能
■ 平常時はDoctor Carとして、災害時にはDMAT Carとして活用
■ 日本財団の助成を受け導入
ECMO Carの仕様
福岡大学病院 ECMOセンターのECMO Carの仕様は
「 Tri-Heart ドクターカー Mobile ECMO仕様 Ⅷ 」です。なんと配備したのはTri-Heart 100号車 でした。
福岡大学病院 ECMOセンター Tri-Heart ドクターカー Mobile ECMO仕様 Ⅷ 製品概要.pdf | 株式会社 赤尾
救急車両 ドクターカー Mobile ECMO仕様 | 株式会社 赤尾
※福岡大学病院 092-801-1011(代表番号)
搬送依頼の際は、
「救命Dr.リーダー(PHS 6119)」を電話交換にお伝えいただくとスムーズに対応できます。
従来の人工呼吸管理では救えないような重症呼吸不全患者の管理に悩まれている際は、いつでもご相談ください。
24時間体制で迅速に対応させて頂きます
福岡県内に限らず、遠方からの広域搬送も可能な限り対応します。
当センターにおける相談基準は以下の通りです。
- ① 年齢:70歳以下
- ② 日常生活動作:ADL自立
- ③ 低酸素血症
(PaO2/FiO2比<100)
- ④ 高二酸化炭素血症
(PaCO2>80、pH<7.2)
- ⑤ 人工呼吸管理が難しい程の
高度なエアリーク状態
- ⑥ 相対的禁忌
・人工呼吸器開始から7日以上
・悪性腫瘍などの不可逆的な臓器障害
上記の搬送依頼相談基準を満たさなくても構いません。
また、ECMO管理に関するご相談だけでも構いません、お気軽にご連絡ください。
ECMOにご興味のある方へ
「ECMOを導入した後の管理法に関するアドバイスが欲しい。」
「スタッフ教育の講演を依頼したい。」
「ECMOを見学したい。」
ECMOに関するあらゆる相談に可能な限り対応いたします。
当センターは見学者や研修生を積極的に受け入れています。
また、ECMO講習会は2020年9月以降より九州各県で開催予定です。
医学生・研修医、ECMOスペシャリストを目指す方をお待ちしてます。
福岡大学病院
救命救急センター ECMOセンター
TEL .092-801-1011(代表)
救命救急センター川野もしくは救命Dr.リーダー(PHS 6119)まで
Email eccm2928@fukuoka-u.ac.jp