患者さんへ

対象疾患脳動脈瘤・くも膜下出血

脳動脈瘤

脳の血管にできる風船のようなふくらみを脳動脈瘤といいます。瘤のできる理由は明らかでありませんが、高血圧や血流分布の異常などの血管壁へのストレスや喫煙、遺伝などによる動脈壁の脆弱性に関連すると考えられています。以前は破裂してみつかることがほとんどでしたが、最近は頭痛の検査や脳ドックでMRIやCT検査をうけ発見されることが増えています。まれに未破裂脳動脈瘤が大きくなって脳の神経を圧迫しその障害を生じてみつかる場合もあります。大きさは径2mm程度の小さなものから25mm以上の大きなものまで様々ですが、ほとんどは10mm未満の大きさです。 未破裂脳動脈瘤の多くは症状をきたしませんが、破裂してくも膜下出血をきたす場合があります。くも膜下出血は発生すると半数以上の方が死亡するか社会復帰不可能な障害を残してしまう極めて重篤な病態です。未破裂脳動脈瘤は平均年1%で破裂の危険性があるといわれています。大きさの大きい瘤、前交通動脈瘤や後交通動脈瘤、脳底動脈瘤、形のいびつなもの、多数の動脈瘤、多量の飲酒、喫煙、高血圧を有する患者で破裂率が高いと考えられています。 脳動脈瘤がみつかるとすぐに治療が必要なわけではありません。日本のガイドラインでは、未破裂脳動脈瘤の自然歴(破裂リスク)や治療リスクを考慮し、

  1. 5から7mm以上の未破裂脳動脈瘤
  2. 上記未満であっても、  症候性の脳動脈瘤  後方循環、前交通動脈、および内頚動脈-後交通動脈部などの部位に存在する脳動脈瘤  Dome/neck aspect比が大きい・不整形・ブレブを有するなどの形態的特徴をもつ脳動脈瘤

が治療の検討を要するとされています。治療には下記の方法があります。

脳動脈瘤の治療

①開頭クリッピング術

開頭術で脳の溝を分けて、チタンやステンレスでつくられたクリップで動脈瘤の根本を閉塞し、瘤への血流をせきとめます。正確にクリップがなされた場合は再発が非常に低いのが特徴です。

②脳血管内治療(コイル塞栓術)

脳血管内治療は、カテーテルやコイル、ステントなどの各種治療器具を駆使し、脳動脈瘤、頚動脈狭窄、急性期脳梗塞、脳血管奇形などを、頭を切らずに治療する方法です。コイル塞栓術とは、太腿や手の動脈からカテーテルを進め、脳動脈瘤にプラチナコイルを挿入し、動脈瘤を内側からつめてしまう治療です。動脈瘤の根本が広い動脈瘤(ワイドネック)や不整形、大型動脈瘤はコイル塞栓術が不向きとされていましたが、最近では様々なコイルやステントを使用することでほとんどの動脈瘤の治療が可能となっています。

当科ではガイドライン・エビデンスに基づいた手術適応の判断、患者さんの年齢・基礎疾患に応じた適切な治療方法を、カンファレンスで合議し決定しています。当科は全国でも有数の手術症例数を誇り、安全かつ丁寧な治療を行うことで良好な成績を得ています。我々は通常の開頭手術/血管内手術のみならず、大型/巨大脳動脈瘤、解離性脳動脈瘤などの難治例には、それらの複合手術、またバイパス手術を駆使した治療を行なっています。

症例画像で見る脳動脈瘤の治療

開頭クリッピング術

開頭クリッピング術

脳動脈瘤コイル塞栓術

脳動脈瘤コイル塞栓術

ステントを用いた脳動脈コイル塞栓術

ステントを用いた脳動脈コイル塞栓術

くも膜下出血

脳は外側から硬膜,くも膜,軟膜で覆われており,くも膜と軟膜のすき間はくも膜下腔と呼ばれています.このくも膜下腔に出血を起こした状態がくも膜下出血です.原因としては脳動脈の一部がふくらんでできた動脈瘤の破裂によるものが大部分です.死亡率が高く,手術により救命できても後遺症を残す場合があります。当院では救命センターと連携し、くも膜下出血に対する積極的治療を行っています。特に重症くも膜下出血に対するコイル塞栓術と神経内視鏡手術の併用治療では、良好な成績を上げています。

重症くも膜下出血に対する脳動脈瘤コイル塞栓術と神経内視鏡手術の併用治療

重症くも膜下出血に対する脳動脈瘤コイル塞栓術と神経内視鏡手術の併用治療

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