対象疾患頭蓋底腫瘍
頭蓋底腫瘍とは
当科が誇る特徴の一つとして、難易度の高い頭蓋底手術があります。頭蓋底手術とは、通常の開頭手術では摘出困難な脳の最深部に発生した腫瘍に頭蓋骨底部の骨を一部削除することで到達し、病変を摘出する手術です。対象とする腫瘍の種類には髄膜腫、神経鞘腫(聴神経腫瘍、三叉神経鞘腫)、頭蓋咽頭腫、類上皮腫などの良性腫瘍が多いですが、脊索腫、嗅神経芽細胞腫、転移性脳腫瘍、耳鼻科領域の癌などの悪性腫瘍の治療も行っています。
頭蓋底には重要な血管や神経が複雑に密集し、視床下部や脳幹部など生命維持に関わる部位が存在するため、これらを温存するために正しい解剖知識と安全に摘出する経験と技術が求められます。当施設には脳神経外科領域の微小解剖の権威であるフロリダ大学の故Albert L. Rhoton Jr.教授の元で微小解剖を学んだエキスパート達が在籍しています。そういった背景から福岡県内外の多くの先生方からご紹介をいただき、頭蓋底腫瘍の診療を行っていますが、日常的に研究会や学会などでも講義を行い、教育活動にも力を入れています。
当施設では、治療を受けられる一人一人の生活を重視し、年齢、腫瘍の大きさ、悪性度に基づき適切な治療戦略を立てています。そのため、治療は手術のみならず、慎重な経過観察や放射線治療を選択することもあります。手術の場合は、必要に応じて術前精密検査(CT, MRI, PET, 脳血管造影検査など)を行い、術中ナビゲーション、神経モニタリングなど最新の医療機器を用いた安全な手術を心がけています。また近年では神経内視鏡を導入し、低侵襲な手術も積極的に行っています。
脳神経外科手術は、患者さんの人生の中でとても大きな出来事になり、時には人生をかけた戦いになることもあるかと思います。我々は患者さんの思いを受け、責任を持って診療にあたらせていただきます。入院中のみでなく術後も外来で定期的な治療の継続を行います。
症例画像で見る頭蓋底腫瘍
聴神経腫瘍 外側後頭下開頭手術
術前
術後
第三脳室内頭蓋咽頭腫 大脳縦裂経由手術
術前
術後
脳幹部海綿状血管腫 小脳延髄裂経由手術
術前
術後
錐体骨先端部髄膜腫 前方錐体骨経由手術
術前
術後
錐体斜台部髄膜腫 前方+後方錐体骨経由手術
術前
術後