患者さんへ

対象疾患不随意運動症(運動障害)

ここでは、自分の意思に反して身体が動いてしまったり、筋肉の緊張が強くなってしまったりするような病気とその外科治療について紹介します。

パーキンソン病

パーキンソン病

手の振るえ(振戦)、動きにくさ(寡動)、そして体の固さ(固縮)などが特徴の疾患ですが、肩の痛みや歩きにくさなどで発症することもあります。歩きにくさの特徴には小刻み歩行(歩幅が短い歩き方)やすくみ足といった症状が挙げられます。のドーパミンという神経伝達物質の産生が少なくなることとで発症すると考えられているため、ドーパミンを補充することが基本的な治療法となります。しかし、薬では抑えることのできない手足の振るえ(振戦)がある場合には脳深部刺激療法などの外科手術が必要となります。また、パーキンソン病の進行にともない、ウェアリングオフという薬の効果が切れてしまって動けない時間ができてしまったり、ジスキネジアという身体をうねうねと動かしてしまうような不随意運動が出現したりすることがあります。そういった進行期の状況を改善させるために脳手術が有効です。

振戦

自分の意志とは関係なく手足が振るえることを『振戦』と言います。手が振るえてしまうためにうまく文字を書けない、コップをうまく掴めない、といった症状がある場合は『本態性振戦』の可能性があります。本態性振戦の特徴としては、手足を動かしていないとき(安静時)は振るえないことやお酒を飲むと症状が改善するといった点も重要です。他にも、脳卒中(脳出血や脳梗塞)や脳に傷がついてしまう重症頭部外傷の後遺症、もしくは多発性硬化症といった自己免疫疾患などによる後遺症としても激しい振るえが起きることがあります。治療にはいずれの場合も神経の興奮を抑えるような内服薬を使用しますが、効果が不十分な場合には脳深部刺激療法などの外科治療も治療の選択肢となります。

ジストニア

体の一部もしくは全身に持続的に力が入ってしまい、思うように体を動かせないような状態を言います。自分の意志とは関係なく体が動いてしまい、異常な姿勢や動作を起こします。症状としては、首が捻れて横を向いてしまう(頚部ジストニアもしくは痙性斜頚)、まぶたが勝手に閉じてしまう(眼瞼痙攣)、文字を書こうとすると異常に力が手に入ってしまう(書痙)、腹筋に異常に力が入ってしまい前屈みになってしまう(前屈症)などが挙げられます。治療法には内服薬やボツリヌス毒素の施注以外に、脳深部刺激療法といった手術があります。

トゥレット症候群

トゥレット症候群(もしくはトゥレット障害)とは自分の意志に反して手足や顔面などを動かしてしまったり、汚言・絶叫を発してしまったりする疾患のことを言います。これらの運動はチック(tic)と呼ばれ、トゥレット症候群の特徴的な症状です。多くの場合は10歳頃に発症して思春期後に改善しますが、中には症状が持続して悪化を来してしまうような場合もあります。薬物療法や精神心理学的な治療が主に行われますが、重度の場合にはこれらの方法に抵抗性を示します。この疾患における不随意運動は音声チックと運動チックに大きく分けられます。音声チックは汚言症(罵りや卑猥な言葉を発すること)や咳込み、そしてうなり声などとして表出し、運動チックは顔面の素早い動きや首振り、体をねじるような動きなどとして表出します。重症の場合はチックによって社会的生活が制限され、最悪の場合は生命の危険に脅かされることもあります。特に、頭を自分で殴りつけてしまうなどの自傷行為としてチックが出現している場合は非常に危険ですので、外科手術も選択肢として考慮されます。

定位的機能外科手術(脳深部刺激療法・視床凝固術・淡蒼球凝固術)

定位的機能外科手術

脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)(とは、脳の深い部分に電極を埋め込み、そこに胸部に埋込んだパルスジェネレーターから電気信号を送り込んで刺激を行う方法です。脳回路の異常な活動を抑制し、症状を改善させます。また、さまざまな状況によって装置植込が適さない方については、電極を入れるかわりに脳の一部を高熱で凝固する手術(視床凝固術・淡蒼球凝固術)を行うこともあります。手術は症状やご希望に合わせてそれぞれの方で合わせるよう心がけています。

さらに詳しく知りたい方はこちらのホームページもご参照ください。
福岡大学医学部脳神経外科
脳神経機能回復に関する研究と治療の紹介
http://fu-functionalrecovery.com/index.html

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