患者さんへ

対象疾患キアリ奇形

キアリ1型奇形、脊髄空洞症

キアリ1型奇形は、後頭蓋窩の発生異常を基盤とする奇形で、小脳扁桃が脊柱管内に陥入する疾患です。MRIで大後頭孔から小脳扁桃が5mm以上下垂する所見(頭蓋骨の外にはみ出した所見)があることで診断されます。小脳扁桃は通常、頭蓋骨の中に収まっているべき構造ですが、頭蓋外にはみ出すことでそれ自体や脳幹などの構造が圧迫されて症状が出現します。

多くの場合、無症状でたまたま発見されますが、下垂した小脳扁桃による後頭部痛、特に咳やトイレでいきんだ際に増強する頭痛が特徴的です。痛みは肩や腕に及ぶこともあります。小脳や脳幹の圧迫によりふらつき、めまい、無呼吸などが出現することもあります。また、下垂した小脳扁桃により脳脊髄液の循環障害が生じ、約50%で脊髄空洞症(脊髄の中に髄液という水分がたまってしまう状態)を合併することがあります。脊髄空洞症により上肢の痺れ、温痛覚障害など解離性感覚障害を来たし、進行すると運動障害など麻痺を来すこともあります。その他、水頭症、側弯症・後頭骨環椎癒合・頭蓋底陥入症などの骨異常を合併することもあります。

無症状の場合は経過観察を行いますが、症状のある場合や脊髄空洞症を合併している場合には外科治療が積極的にすすめられます。治療としては、後頭骨の一部の骨削除と第1頚椎椎弓切除を行うことで大後頭孔部の減圧をさせ脳脊髄液循環の改善を図る大後頭孔部減圧術(foramen magnum decompression: FMD)を行います。当院では、症例により硬膜を人工硬膜に置換しさらに後方への減圧を図る硬膜形成術も併用しています。術後に症状や脊髄空洞症が改善する場合が多いですが、神経症状は改善しにくい場合もあるため、手術により症状の進行を抑えることが主な目的になります。

脊髄空洞症を伴うキアリ1型奇形

左の写真は大後頭孔(赤い線)の下に小脳扁桃(黄色い矢印で指している部分)が出っ張ってしまっているのがわかります。右の写真では、黄色い矢印で指している白く写っている部分が脊髄の中にたまった髄液です(脊髄空洞症)。

脊髄空洞症を伴うキアリ1型奇形

大後頭孔部減圧術 (foramen magnum decompression: FMD) 後の状態

赤い矢印で囲った部分が後頭骨の削り取った部分です。

大後頭孔部減圧術 (foramen magnum decompression: FMD) 後の状態

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