診療を受けられる方へ

甲状腺の悪性腫瘍には、以下の種類があります。

  1. 乳頭がん
  2. 濾胞がん
  3. 髄様がん
  4. 未分化がん
  5. 悪性リンパ腫

検査としては、血液検査、超音波検査(必要により穿刺吸引細胞診)、CT等がおこなわれ、進行度に応じてシンチグラム(甲状腺、骨)、食道造影、食道内視鏡(食道浸潤が疑われる場合)、気管支鏡(気管浸潤が疑われる場合)等を実施する場合があります。これらの検査により上記の甲状腺悪性腫瘍と診断されるか、あるいは強く疑われる場合には進行度やがんの種類(組織型)に応じて手術を含む治療方針が決定されます。

乳頭がん

甲状腺乳頭がんは甲状腺癌の中でもっとも頻度が高く、当科での甲状腺手術症例の90%以上に相当します。甲状腺乳頭がんは、一般的な「がんや肉腫」の中では発育が大変緩徐とされており、切除後の予後も良好です。前述した諸検査で診断に至りますが、甲状腺近傍には気管・反回神経・食道・副甲状腺などの重要な臓器が存在するため、手術前にはこれらの部位に腫瘍浸潤がないかどうかを評価する必要があります。
腫瘍浸潤の状況によっては反回神経麻痺による「嗄声(ささやき声のような声)」がおこったり、気管浸潤によって気管が狭窄し「呼吸困難」を伴うこともあります。また、乳頭がんは頸部リンパ節転移が比較的高率に認めることも知られています。

【治療方針について】

甲状腺は頸部気管の前面に位置する「蝶形(蝶ネクタイのような形)」をした柔らかい臓器です。左右をそれぞれ「左葉・右葉」とよび、中央の連結部分「甲状腺峡部」と呼びます。「乳頭がん」が甲状腺の左右の片側に存在する場合(殆どのケースがこれに相当します)、標準的には甲状腺(左または右)葉切除+頸部リンパ節郭清が行われます。リンパ節に既に転移が認められるかそれが懸念される場合、リンパ節からの再発を防ぐためにリンパ節郭清が行われます。がんが甲状腺峡部を超えて左右両葉に広がっている場合は、「甲状腺全摘術」を施行する場合があります。
既に肺などに転移を認める乳頭がんの場合は、甲状腺全摘術の後に放射線内照射治療(ヨード治療)を手配いたします。(当施設には、ヨード治療設備がありませんので、必要な場合は近隣の施設にご紹介致します)

*気管・食道合併切除について

甲状腺癌はその解剖学的位置から、気管や食道に浸潤する場合があります。特に気管は甲状腺癌が直接浸潤しやすい臓器であり、場合によっては腫瘍の完全切除のために気管を合併切除する必要がある場合があります。当科は呼吸器外科が専門ですのでそのような手術にも十分に対応が可能です。

濾胞がん

乳頭がんに続いて症例数が多いのが甲状腺濾胞がんです。このがんで注意しなければいけないのは、良性の濾胞腺腫としばしば鑑別が困難である点です。腫瘍部分に針を刺して細胞を採取する「針細胞診」で癌か否かを判定しますが、診断が困難な場合がしばしばあります。この為、

  • 超音波所見で悪性が疑われる場合
  • 経過観察中に腫瘍に増大傾向が認められる場合
  • 腫瘍径が大きい場合
  • 血液検査異常(サイログロブリン高値)を示す場合
  • 頸部圧迫症状など有症状な場合

などは、濾胞がんと確定診断されなくても手術を推奨する場合があります。

【治療方針について】

乳頭がんと同様、腫瘍を含む甲状腺を完全に切除する必要があります。甲状腺の片側に存在する場合は片側の甲状腺葉切除+頸部リンパ節郭清が行われ、がんが甲状腺の左右両側に広がっている場合は、「甲状腺全摘術」が施行されます。

髄様がん

甲状腺の濾胞細胞から発生するカルシトニンを分泌するC細胞由来のがんです。散発性の場合も多く見られますが、なかには常染色体優性遺伝疾患として副腎や副甲状腺に病変を伴う場合も見られます。ルーチン検査で当疾患が疑われる場合には血液検査にてカルシトニンやCEA値を測定した上で遺伝学的検索を施行します。

【治療方針について】

甲状腺全摘とリンパ節郭清が基本です。手術以外に有効な治療方法はありません。

未分化がん

未分化がんは甲状腺悪性腫瘍の1%程度の稀な腫瘍です。未熟な細胞から発生するがんですが、初めから未分化がんとして新生するのではなく乳頭がんなどの母地があって変異発症するものと考えられています。予後は極めて不良であり、無治療では2,3ヶ月の予後と考えられています。通常は細胞診で確定できます。

【治療方針について】

甲状腺未分化癌は他の甲状腺がんと異なり、急速に発育・増大して気管や食道などに浸潤し、窒息や摂食障害などの緊急事態に至って発見される場合があります。一般に治癒切除が不能なことが多く、肉眼的にがんの遺残のない切除を施行しても予後は極めて不良です。通常放射線療法、化学療法を組み合わせた集学的治療による効果に期待します。

悪性リンパ腫

比較的珍しい甲状腺腫瘍であり甲状腺悪性腫瘍の1-2%とされています。橋本病を基礎疾患として有する場合が多く、橋本病における血液検査や画像診断の注意深いフォローが必要です。細胞診のみでは診断にいたらず、生検により組織学的診断を得ることもあります。

【治療方針について】

諸検査により病期評価をして、放射線化学療法を術後に施行します。奏功率は高く近年では予後の向上が見られます。

当科における手術成績:

過去5年間(2009年4月~2013年3月)の甲状腺悪性腫瘍手術症例は103例でした。内訳は甲状腺がん72例、良性疾患が31例でした。高度局所浸潤甲状腺がん症例に対しては術式別の適応を決めて良好な術後QOLをめざした治療を行っています。

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