【肺移植をお考えになる患者さんへ】
【ご紹介頂く先生方へ】
肺移植とは、肺の病気(癌の末期などは除く)によって呼吸機能が著しく低下し、これにより強い呼吸困難症状を来した方に対し、ご自分の肺(病気の肺)と提供者の肺(健常な肺)を入れ替える(移植する)ことによって呼吸機能を取り戻していただく治療です。脳死になられた方から肺を頂いて移植する形式を「脳死肺移植」、健康なご家族等からその方の肺の一部を頂いて移植する形式を「生体肺移植」と呼びます。
*肺癌やその他の悪性疾患(癌・肉腫・血液由来の悪性疾患)による呼吸困難は肺移植の適応にはなりません。
肺移植が成功すると患者さんは大変元気になります。移植前は酸素吸入が欠かせず、ほとんどベッド上の生活であった患者さんが、移植後には酸素を必要としなくなるばかりか、旅行に出かけたり、仕事に復帰したりできるようになります。若い患者さんであればスポーツに参加できるようになることもあります。移植を契機に新しい人生が始まる、と言っても過言ではないでしょう。
肺移植手術は、通常の肺癌手術などと比較すると危険性の高い手術であり、期待した効果が得られないこともあります。その理由は、手術そのものの侵襲が高いことに加え、拒絶反応や感染症、臓器再潅流障害など、臓器移植に特有のたくさんの問題があるからです。
また、移植手術がうまくいっても、拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤を生涯内服しなければなりません。これによって感染症にかかりやすい状態が続きますし、術後に何年もたってから拒絶反応が起こる可能性もあります。
また、免疫抑制剤の長期内服は「がん」の発生率を通常の10倍まで高めるとも考えられています。
「脳死肺移植」は脳死になられた方からの篤志の「臓器提供」をうけて実施される臓器移植です。「脳死肺移植」を受けるためには福岡大学のような移植実施施設で厳重な検査を受け、「臓器移植ネットワーク」に名前を登録しなければなりません。「脳死臓器移植」の詳しい内容と仕組みは「日本臓器移植ネットワーク」の ホームページhttps://www.jotnw.or.jp/から閲覧することができます。
生体肺移植は、脳死肺移植とは異なり健康な近親者(生体ドナー)から肺の一部分の提供を受けて実施される移植です。通常は、病状が重くて「脳死臓器提供を待つ時間的余裕がない場合」に実施されます。
生体肺移植は原則的に2名の生体ドナーが必要です。一人のドナーから右あるいは左の肺の一部(下葉と呼ばれる部分)を提供していただきますが、これはその提供者の方の肺全体の約25%程度になります。しかし、移植を受けるのが「小さな子供さん」や「体格の小さな大人」の場合、例外的に「提供者が一人」でよいこともあります。
生体肺移植のドナー条件(姻戚関係)
福岡大学では生体ドナーとなる方は原則的に2親等以内の親族・姻族すなわち『両親・兄弟に加えて配偶者(夫または妻)』までと定めています。(福岡大学生体肺移植実施基準)。特殊な事情でこの範囲を超える姻戚関係の方(例えば伯父や叔母等の3親等縁者)に提供をお願いする場合は、「福岡大学倫理委員会」の厳重な審査を経なければなりません。この「生体ドナー姻戚条件」は各実施施設によって異なる場合があります。
福岡大学肺移植チームは、「臓器移植は脳死移植が基本である」と考えています。生体肺移植は健康なドナーに負担をかける移植形態であるため、「移植希望患者さん」の病状が脳死臓器移植の順番を待ちきれないと判断された場合にのみ実施いたします。
このような理由から生体肺移植希望の患者さんにも原則的に「脳死肺移植」登録をして頂くことを前提としています。しかし、病状が悪すぎて脳死移植登録を実施する時間的余裕すらない患者さん、あるいは脳死臓器提供が見込みにくい子供の患者さんの場合は緊急で「生体移植」を実施する場合もあります。
肺移植には莫大な経費がかかります。しかし、2008年から「脳死肺移植」「生体肺移植」共に健康保険適応が可能となりました。以前は患者さんが資金集めのために「募金活動」などを余儀なくされていたことを考えますと大変な変化です。
患者さん個々がお持ちの「健康保険」や「医療保護」によって支払額は変わってきますが、少なくとも膨大な額ではありません。詳しいことは受診の際にお尋ねください。
肺移植をお受けになるためには詳細な医学資料が必要になります。この為、現在おかかりの先生に「病歴」、「検査データ」、「レントゲン画像」に関する情報を頂かなくてはなりません。まずは現在の主治医にご相談になり、福岡大学肺移植チームにご連絡をとって頂くようにご依頼下さい。詳しくは、以下の【肺移植患者さんのご紹介(手続き)】をご参照下さい。
肺移植をはじめとする「脳死臓器移植」は、「臓器移植法(1997年発効)」という特別な法律のもとで実施されています。肺移植はこの法律に基づいて指定された国内9か所の病院のみで実施を許されており、福岡大学病院はその一つです。肺移植希望の患者さんは福岡大学病院のような最寄りの「肺移植認定施設」で検査を受け、脳死肺移植登録をする必要があります。
福岡大学病院は2005年に「脳死肺移植・生体肺移植」の実施施設に指定され、2006年には「九州で初めての脳死肺移植と生体肺移植」を実施しました。
その後、福岡大学の肺移植プログラムは着実に経験を重ね、2019年末までに38件の肺移植を実施いたしました(脳死肺移植34件、生体肺移植4件)。現在福岡大学では九州一円より常時30名以上の脳死肺移植待機患者さんが移植待機をされています。
福岡大学で移植待機中の患者さんへの「臓器提供」が決まったら、「臓器移植ネットワーク」から福岡大学病院に直ちに連絡が入ります。福岡大学肺移植チームはそれに応えられるように常に準備をしています。
移植を実施することが決まった患者さんは福岡大学肺移植チームから連絡を受け、例え夜間であってもすぐに福岡大学病院へ入院していただくことになります。
これと同時に福岡大学からは4名の医師からなる「摘出チーム」が「提供病院」へ向かいます。篤志の提供者に十分な礼を尽くして「提供肺」を受け取った後、福岡大学チームは必要に応じてチャーター機などを使用し、大切な「移植肺」を一刻も早く福岡へ運びます。
この間、福岡大学病院では「肺移植手術」の準備をすすめ、「移植臓器」の到着と同時に移植手術を実施いたします。
福岡大学では、週に2日(火曜日、木曜日)に「肺移植外来」を開設しています(完全予約制)。地域連携室(092-801-1011)あるいは直接に移植コーディネーターを通じて予約をおとりください。
受診にあたっては事前に診療情報と画像資料をお送り頂けますとスムースな受診が可能となります。可能な範囲でのご手配をお願い申し上げます。
福岡大学呼吸器外科「肺移植外来」(予約制)
火曜日・木曜日; 09:00-11:00
担当:白石武史(肺移植プログラム責任者)連絡先; 福岡大学地域連携医療室(092-801-1011)
又は臓器移植コーディネーター當房悦子
患者さんご自身、或いはご紹介いただく先生方からのメール相談を受け付けます。お気軽にご質問ください(基本的に「コーディネーターからのご返答」になります)。但し、メールには御氏名、居住地を明記ください。匿名(差出人不明)のメールにはお答えできません
肺移植用問い合わせ用E-mail
lungtransplant@ml.fukuoka-u.ac.jp