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Laparoscopic Surgery

[ 3 ] 腹腔鏡手術


腹腔鏡手術

 当科では、良性疾患から悪性腫瘍の治療法として開放手術(各臓器の全摘術)から腹腔鏡下手術や顕微鏡手術など多種多様な手術術式を導入しています。 なかでも低侵襲性治療の代表である腹腔鏡下手術は、従来の開放性手術に比べ手術創も小さく術後早期の回復が可能となりました。 大学病院泌尿器科の使命として、患者さんに安心してより安全で確実、身体に優しい腹腔鏡下手術を受けていただけるように技術の探究と教育には積極的に取り組んでまいりました。 現在3人の泌尿器腹腔鏡下手術認定医が在籍し、腎・副腎疾患、結石、腎盂形成術から前立腺全摘術まで幅広く本法を行っています。


腹腔鏡手術とはどのような手術か?

1:まず、腹部に3~4カ所の、1~2センチの切開した傷からトロカーと呼ばれる器具を留置します。内視鏡や手術に使用する器具を出し入れします。
2:二酸化炭素を注入してお腹を膨らませ、副腎や腎臓・尿管、前立腺などの臓器を見えるようにします。
3:トロカーから細長い器具(はさみ、鉗子、止血、吸引用)を入れ、内視鏡から見えるお腹の中の様子をモニターに映しだし操作します。
4:遊離した臓器(副腎、腎臓・尿管、前立腺、結石など)は直接取り出す場合や専用の袋をお腹の中に入れて、この袋に切離した臓器を入れて取り出す方法があります。手術方法により異なりますので後程説明します。
5:手術した部分から出血や滲出液を体外に出すために、柔らかいドレーンという細い管をトロカーを入れた一つの傷からお腹の中に留置して手術を終了します。


手術動画 腹腔鏡手術
上記動画は手術中の様子が再生されます。
Youtubeでは18歳以下の視聴制限を設定しております。
また、出血を伴う画像がありますのでご注意ください。

その他の手術動画一覧はこちら ]

腹腔鏡の特徴・長所

1:これまでの開放手術(お腹に大きな傷を入れる)と比べ、傷も小さく筋肉を切らないので術後の傷の痛みが軽度です。術後の回復も早く、早期に離床できます。入院期間も短縮しました。
2:内視鏡を通したお腹の中の状況がモニターに拡大され映しだされますので、開放手術に比べより細かく丁寧かつ確実な操作が可能となりました。他の臓器もよく観察できますので仮に臓器に損傷・やけどがおこった場合も対応が敏速に行えます。出血量も開放手術に比べ少ないことが多いです。
3:術者、助手、ナース、麻酔科医など他のスタッフが同時に同じ映像がみれますので判断に迷ったときや泌尿器科専門外臓器に何か問題が生じた時、他科の先生にもすぐ相談にのっていただけ速やかな対応ができます。


腹腔鏡の短所、合併症

1:手術の内容によって異なりますが、一般的に腹腔鏡手術では開放手術より手術時間が長めになることがあります。
2:予想しないような大出血が起こった場合、開放手術に比べ止血に手間取ることがあります。
3:腹腔鏡手術には、次のような併発症(自然になおります)や合併症(再手術や治療が必要となります)の可能性があります。


開放手術でも起こりうる合併症

出血: 血管に傷が入る場合と組織からダラダラとでることがあります。輸血、開放手術への変更が必要なことがあります。
多臓器の損傷:血管、肝臓、胆嚢、脾臓、膵臓、腸などを術中に傷つける可能性があり、その場合には最善の処置を心がけますが、それらの臓器の摘出を含め開放手術に移行する可能性があります。
術後腸閉塞:術後に腸が癒着し再手術が必要になる可能性はありますが、開放手術に比べ頻度は少ないです。現在のところ当科では一例もありません。
術後の腹膜炎・膵炎:拡大されたモニター画像で手術を行いますが、小さな腸の傷から腹膜炎や膵炎になる可能はあります。仮に起こった場合は再手術となることがありますが、現在のところ当科では一例もありません。
術後の創感染:傷の縫い直しが必要になる場合がありますが、開放手術に比べ創が小さい分起こりにくいと考えます。
術後の創離開:創がくっつかないで開いたままになることがありますが、自然と肉が盛り上がります。治りが遅い場合は再縫合する可能性があります。
創ヘルニア:傷から腸が出てきたり、筋肉がゆるくなって盛り上がることがありますが、再手術が必要となることがあります。現在のところ当科では一例もありません。
気胸:肺を包む胸膜に傷がついたり、お腹と胸部(肺・心臓があるところ)を隔てている横隔膜を損傷したとき、肺の周りに空気が入って肺が圧迫される状態です。胸部(肋骨の間から)にドレーンという細い管を入れる処置が必要となることがあります。
肺塞栓症:新聞でも騒がれたエコノミークラス症候群です。おもに足の血管の中で血液が固まり、これば血管の中を流れて肺の血管をつまらせる状態です。生命の危機につながる重大な合併症です。術中には予防のため足にストッキングをはいて頂いたり、周期的に足を圧迫をする装置を使用します。出来るだけ術後に早く歩行を開始することが大切です。


腹腔鏡手術に特有の併発症・合併症

皮下気腫:二酸化炭素が皮下(脂肪や皮膚と筋肉の間など)にたまってピリピリ感や不快な感じのすることがあります。指で押さえるとブツブツと音(感触)がしますが、数日間で自然に吸収されます。
術後の肩の痛み:手術後に肩に痛みがおこることがあります。お腹の中にいれた二酸化炭素が横隔膜を刺激しておこりますが、自然に治ります。
ガス塞栓:二酸化炭素が血管の中に入って肺の血管が通らなくなる状態できわめてまれですが危険な合併症です。当科では一例もありません。
創部への癌の転移:腹腔鏡では、癌がある臓器を取り出すときに創に転移が生じたとの報告がまれにあります。


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