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Prostate Cancer

[ 5-3 ] 前立腺がん


前立腺がんとは?

 前立腺は男性だけにある臓器です。前立腺は膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいます。 (図1)また、一部が直腸に接しているため、直腸の壁越しに指で触れることができます。 前立腺は層構造をしていて、尿道のまわりの内腺と被膜付近の外腺に分けられます。 前立腺がんは主に外腺(辺縁領域)に発生します(図2)。 ほかの臓器のがんとは異なり、ゆっくりと進行するため、早期に発見できれば、ほかのがんに比べて治りやすいがんであるといえます。 しかし、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることがあります。 進行すると最終的には骨やほかの臓器にまで転移することがあるため、早期に検査を行い、発見し、適切な治療を行うことが大切になります。



図1:前立腺と周囲臓器の解剖


図2:前立腺がん後発部位

前立腺がんの検査

 前立腺がんの簡便な検査法として、PSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーの測定が行われています。 PSAが高い値(4.0ng/ml以上)の時は前立腺のがんや肥大症が疑われ、値が高いほど前立腺がんの可能性が高くなります(図3)




超音波ガイド下前立腺生検

 前立腺がんの確定診断に必要な検査です。当講座では主に、超音波ガイド下経直腸的前立腺生検を施行しています。 1泊2日の入院で行います。 入院当日に検査を行い、翌日に退院を予定しています。 超音波で前立腺を観察しながら針を刺して前立腺組織を採取します。 当院では標準で12か所の生検を実施しています。 患者さんの状態に応じて、全身麻酔下での検査や、経会陰的生検を選択もしくは追加することがあります。



図4:経直腸的前立腺生検と入院からの流れ

進行度による治療法の選択

 前立腺生検で、前立腺がんと診断された後は、CTや骨シンチグラフィー検査、MRIなどの画像検査を追加し、癌の進行度により治療法を選択します。(図5)



図5:進行度による治療法の選択

前立腺がんの治療法 手術(ロボット支援前立腺全摘除術)

 前立腺がんと診断された後、MRIなどの画像診断で、がんの転移や、前立腺外にがんが及んでいない場合、年齢や体の状態を考慮して、手術治療や放射線療法がおこなわれます。 (がんの悪性度が低い場合は、治療を行わずに、採血や画像診断等で経過を見ていくこともあります。) 担当医と相談し、手術療法を選択された場合は、前立腺全摘除術を行います。 前立腺と精嚢を取り除いた後、膀胱と尿道を体内でつなぎ合わせる手術です。(図6)



図6:前立腺全摘除術

 当科では2015年8月より最新の手術支援機器 da Vinci Xi:ダ・ヴィンチ Xi を用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を開始しました。 ロボット支援手術は手術の際の傷が小さいだけでなく、拡大した視野、3Dの立体画像で手術を行う結果、 剥離や吻合といった細かい作業を精確に行うことが出来るため、出血が少ない、尿失禁が早く回復する、症例によっては勃起機能を温存できるという利点があります。


[ 手術支援ロボットダビンチXi(daVinci Xi)Youtube動画  こちら ]

※上記動画は手術中の様子が再生されます。
Youtubeでは18歳以下の視聴制限を設定しております。
また、出血を伴う画像がありますのでご注意ください


実際ロボット支援手術を行っている状況です。


術者は、カメラの画像を見ながら、遠隔操作でロボットの鉗子を動かして手術を行います。


術創は、上記のように数か所 2 ~ 3cm 大の小さな切開で行えるため、
開腹手術と比べ、術後の疼痛が軽減されます。

前立腺がんの治療法 去勢抵抗性前立腺がん個別化治療

 当初のホルモン治療が効かなくなった状態のがんを去勢抵抗性前立腺がんといいます。 当講座では、去勢抵抗性前立腺がんに対する前立腺がん個別化治療外来(がんゲノム外来)を開始しました。 去勢抵抗性前立腺がんに対し、2021年より、ある特定の遺伝子変異(BRCA遺伝子の変異)を有する場合、新規の前立腺がん治療薬(オラパリブ 商品名:リムパーザ)の治療が可能になりました。 遺伝子変異を有しない場合は、治療適応とならず、遺伝子変異の陽性率は 10 ~ 18%程度と言われています。 遺伝子変異を有する場合、このオラパリブを使用することで、生存期間の延長が期待できます。



前立腺がんにおけるBRCA遺伝子変異の頻度は 10 ~ 18%。全員が適応となるわけではありません。


BRCA遺伝子変異陽性患者では、オラパリブ使用により長生きできる可能性があります。

 遺伝子変異の有無を確認する方法には、採血か前立腺がんの組織のどちらかが必要になります。 採血のみでは、遺伝子変異を同定するのに不十分となる場合があり、可能であれば、前立腺がんの検体が必要になります。 検体の保存状況によっては当院で再度前立腺生検を実施致します。 遺伝子変異の有無を確認できるのは、福岡県内では当病院を含めて 7施設となります。


前立腺がんの治療法 がんゲノム外来

 2021年3月より、オラパリブの保険適応に伴い、前立腺遺伝疾患外来を開始しました。がんゲノム外来は完全予約制で行っています。 (毎週火曜日) 福岡大学病院 がんゲノム外来の受診方法は、紹介状を持参の上受診いただき、各種検査を行います。 結果が出るまでには、約 3 ~ 4週間かかります。 遺伝子変異を認めた場合は、当院でオラパリブの治療を行いますが、遺伝子変異が認められない場合は、ご紹介いただいた主治医の先生に引き続き、ご加療を頂きます。



図12:前立腺全摘除術

前立腺がんの治療法 放射線治療

 当院では強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy; IMRT)により、前立腺に十分な量の放射線を当てつつ、 周囲(膀胱、直腸)への放射線量を減らすことで治療効果を下げることなく副作用の少ない治療を行っています。 通常、1回 2Gy の照射を 37 - 38回行う計画で治療を行っています。 土日を除き週 5回の照射を 8週間弱続ける計算になります。 ご希望により外来または入院での治療を選択できます。 ホルモン治療と併用することがあります。 また2017年4月よりゾーフィゴ( Ra - 223 )を用いた骨転移に対する治療も開始いたしました。 外来通院での点滴治療で月 1回,6回までの治療を基本とします。


前立腺がんの治療法 各種薬物治療

 前立腺がんの症例によっては、手術ではなく、ホルモン治療を選択します。 また、去勢抵抗性前立腺がんといいます。 この状態になった場合は、症例により新規ホルモン薬による治療、または抗がん剤による治療を選択し生活の質を落とすことなく効果的な治療を行うべく検討いたします。


前立腺がんに対する治療、検査をご希望の患者さんがいらっしゃいましたら、お気軽に泌尿器科外来をご受診ください。

前立腺がん外来担当医:郡家 直敬(毎週火曜、木曜)
がんゲノム外来:松崎 洋吏(毎週火曜)

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福岡大学腎泌尿器外科学講座
〒814-0180 福岡市城南区七隈七丁目45番1号 [ Google Map  ]
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